映画「音符と昆布」  監督:井上春生  市川由衣、池脇千鶴

小暮玄関

  この火星人が、ルームメイトですか?

  小暮ももは作曲家の父と二人暮らし、それともう1名、ももの彼氏が同居中。
  彼女にはふたつの不幸せがある。母がいないこと、生まれつき嗅覚がないこと。でも勝気な性格と、鋭敏な味覚・食感でフードコーディネーターとして頑張ってる。「数字でレシピ」なんてことで、そこそこ知られるようになった。慰めが必要な時はバスタブにオレンジを浮かべる。香りはわからないが、ビタミンカラー、視覚で目を癒やせる。人は欠けているものを、違うものでおぎなえると確信している。
かりん  ひとりっ子だと思っていた、もも。
  宅急便が来たとドアを開けると、火星人「小暮かりん、25歳」が立っていた。
  この時から、おもいっきりの混乱が始まった。そして、ももの知らなかった人生が次々に明らかになる。
  「小暮かりん、25歳」は、ももの姉だと自称する。パリに出張中の父に確認すると、そうだと言う! 初耳!
  かりんは言う。「赤ちゃんの頃、ももがウィルス感染し、鼻の粘膜をおかされ嗅覚を無くした。母は私の面倒をみることにかまけて、あなたの面倒をうまくみれなかった・・・それは、私の責任だ。」

  母は亡くなっていた!!
  かりんは続けて言う。「お詫びは形にして返さないと・・・。子守唄って、ひとのために歌うものです。私にとってたった一人の妹のために、子守唄を聴かせたくて来ました。」

家で  白樺という所から、問い合わせの電話がかかってきた。かりんが施設を脱走したらしい。
  平穏だったももの日常をかりんは混乱におとしいれる。昆布だしの抽出に異常にこだわる。洗濯ものを赤、白、青と色分けして干す。球形の金魚鉢は金魚を虐待していると非難する。蛍光灯の光が突き刺さると言って蛍光管を踏み砕く。ガスコンロがつかないと、スチームアイロンで卵料理?を作る。同居の彼氏はセックスフレンドでしょ、と歯に衣を着せぬ発言を何食わぬ顔で言う。ももの忍耐・・・は切れる。かりんは頭が混乱して収拾できず、床をころげまわって、わめき出す。

音符451  ころげる火星人だ。だがこの火星人、自分より小暮家のことを知っている。
  ももの要求で、父はさらに小暮家の事実を明らかにする。
  「ももにはももの、姉さんには姉さんの弱みがあるんだ。」    
  「実は姉さんは先天的にアスペルガー症候群という障害をもっている。発達障害で自閉症。その障害は、こんなだ。会話のキャッチボールが苦手。話し方がまわりくどい。細かい所にこだわる。秩序・規則に異常に執着する。新聞記事や辞書・時刻表を鮮明に記憶するが言うほどに理解していない。音・光・味の敏感さ/鈍感さが共存。だから姉さんは幼い頃から友人ひとりいない孤独な子だ。」 
  「そんな姉さんが、人付き合いがだめで誤解されやすいのに、あえてやって来た。その理由は、たぶん、もも、お前だよ。」 

並ぶ写真  来て早々、かりんが家の中に一列に並べた写真は、街路灯の写真だが、かりんにとっては音符だ。写真一枚が一音符。並べてメロディ。かりんが、もものために子守唄を作曲した。だが以前から音符が(写真が)ひとつ見つからない。ただ、かりんはその写真の情景を憶えている。絵に描いて見せた。その情景はももも、記憶に残っている! 多摩川の向こう岸、高速道路の高架、そして自分の住んでいた家・・・。

  母も障害をもっていたらしい。そのことが元で、母の不倫という事態になり、かりんが2歳の時に両親は別れた。母はかりんを、父はももを育てる。アスペルガー症候群による かりんの「言うことをきかない、だだをこねる、その頑固さ」に母は閉口しっぱなしの毎日だった。ある日、若くして母が脳卒中で倒れたが、かりんはそばにいて、眠り込んで起きないようにみえる母が目を覚ますのを2日間、見守っていた。つまり事の事態がわからなかった。母は亡くなり、かりんは施設白樺で育つことになった。ももが小学校一年生の時だった。
  一方、ももは父と二人暮らし。小学生の頃に家が火事になった。ももが台所のガス栓を閉め忘れたための失火だった。嗅覚を失っていたももは、ガスの臭いに気付かなかった。

多摩川にて  かりんの突然の出現は、図らずも家族4人の過去を振りかえさせ、共にしみじみとし、そして新たな問題を持ち込んだ。しかし幸いにも、3人がひとつの場で共にする力、何か明日に向かう力を導いたようだ。


監督:井上春生|2008年|75分|公式サイト:http://www.onkon.jp/
原案・脚本:井上春生|撮影:中村夏葉|発達障害監修:谷晋二|協力:社団法人日本自閉症協会東京都支部
出演:小暮もも(市川由衣)|小暮かりん(池脇千鶴)|父・小暮浩二(宇崎竜童)|ももの彼氏・箭内 聡(石川伸一郎)|母・小暮妙子(島田律子)

2011年の世界自閉症啓発デー(4/2)に、名古屋市発達障害者支援センターは発達障害の理解が広がるようにと、名古屋市芸術創造センターにて、アスペルガー症候群をテーマにした「音符と昆布」を上映したそうです。

過去たえこさん   電話相談  見つけた
母が倒れた時に「電話相談」に問いかけた。  無くした音符の事でも「電話相談」に話した。    でもここへ来て見つることができた。



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