映画「旅芸人の記録」 監督:テオ・アンゲロプロス

一座 海

  大河の岸にたたずみ、ゆったり流れる川面を眺め、時を忘れて魅せられるのは、その河の深さと水量の強さに圧倒させられるからだろう。 この映画で、時代の流れの雄大さを感じられるかも知れない。
  とにかく映像が静謐(せいひつ)で美しい。
  そして、あたかも、自分がその場にいて見渡しているかのように感じれる大きな風景と、大地の風と臭いが伝わってくる。さらにアコーディオンの哀愁がスパイシーだ。

集会  第2次世界大戦が勃発した1939年から1952年までの14年間のギリシャを、生き残るために右往左往する旅芸人たちの目線で描かれている。14年間とはいえ、他国からの侵略・占領と、政治的内戦が幾重にも重なって時が過ぎる。一座にとっても波乱と忍耐の時代であった。
  映画では時折、映像だけで説明しようとする。そこが少し残念であるが、今となってはありがたく観させていただくとしよう。
  この間のギリシャの歴史は正直言ってわかりづらい。詳細に史実をトレースしたい向きはこのウィキペディアのページがいいと思う。シーンの歴史説明がある。
  http://ja.wikipedia.org/wiki/旅芸人の記録

  エミール・クストリッツァ監督は「アンダーグラウンド」で、1941年からの旧ユーゴスラヴィアを映画にした。
  (ユーゴスラヴィアの南がギリシャだ)

浜辺米軍  
  今、その挙動が注視されるギリシャという国の来し方を見てみるのに、この映画はいいと思う。
  ご承知かと思いますが、監督のアンゲロプロス氏は、今年の1月に交通事故で他界された。ご冥福ををお祈り申し上げます。


旅を行く  監督・脚本:テオ・アンゲロプロス|ギリシャ|1975年|240分|
  撮影:ヨルゴス・アルヴァニティス|音楽:ルキアノス・キライドニス
  出演:エレクトラ(エヴァ・コタマニドゥ)|オレステス(ペトロス・ザルカディス)|父アガメムノン(ストラト・スパキス)|母クリュタイネムストラ(アリキ・ヨルグリ)|妹クリュソテミ(マリア・ヴァシリウ)|その息子(ヨルゴス・クティリス)|ピュラデス(キリアトス・カトリヴァノス)|詩人(グレゴリス・エヴァンゲラドス)|老男優(アレコス・ブビス)|老女優(ニナ・パパザフィロプル)|アコーディオンひきの老人(ヤニス・フィリオス)|アイギストス(ヴァンゲリス・カザン)


地図だね














1939年から1952年を、機械的に日本に置き換えてみると昭和14年から27年だ。この時代、日本でも旅の一座が各地を回っていただろう。田舎の神社の境内で、栄える炭鉱の町や軍都の演芸場、あるいは兵隊への慰問で満州とか海外にも行ったのかもしれない。
  昭和14年は・・・
   金製品回収・強制買い上げを日本政府が実施
   米穀配給統制令法公布
   満蒙国境で日本・ソビエト連邦両軍が衝突(ノモンハン事件)
   日本軍、天津のイギリス租界を封鎖
   女子のパーマネントを禁止
   白米禁止令実施(七分づき以上を禁止)

  昭和27年は・・・
   アメリカ合衆国との安全保障条約発効。GHQ廃止。
   血のメーデー事件
   永谷園、「お茶漬け海苔」を発売。
   吹田事件
   ソヴィエト連邦、日本の国際連合加盟申請に拒否権発動。
   「鉄腕アトム」、月刊誌「少年」に連載開始。
   闇市はまだ開かれていた。

ギリシャ出身のテオ・アンゲロプロス監督の映画です。
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永遠と一日
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シテール島への船出
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旅芸人の記録


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やまなか
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