映画「BIUTIFUL ビューティフル」 監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
2012年03月21日 公開



重い映画です。
場所はスペイン・バルセロナ。
映像は闇の中であやしく押し黙り、そして雨に濡れて にじむ光のように美しい。
主人公ウスバルの生業
アフリカ系・中国系の不法入国移民に、非合法に就労斡旋している。俗に言えば、露店のショバを仕切ったり、建築現場に人を送ってピンハネしている。しかしウスバルには人助けという気持ちも持っている。

ウスバルは、あるセネガル人家族と親しい。彼らはスラムに住んでいる。その妻ヘイは赤ちゃんを育てているので住民登録できたが、夫は滞在許可,労働許可もなく、案の定、強制送還を食らう。
中国系は男性単身者30人ほどが、古いビルの地下室で雑魚寝状態。ウスバルは彼らをまとめている中国マフィアの手先に仕事を斡旋している。その中に子供連れの女性がいる。ウスバルは彼女ともよく話す。

カトリック教会で葬儀が終わった後に、密かに呼ばれる。
ウスバルは棺桶に収まっている故人のかたわらに、しばらく静かに寄り添う。そしておもむろに故人の手に触れ、個人の最後のメッセージを聞く。それを依頼者の遺族に伝え、同時に依頼者はウスバルの手にお金をそっと握らせる。交霊。霊媒。教会的には男の魔女。

ウスバルの家族
娘息子4人家族。それなりに幸せだった。だが妻が双極性障害を発病する。家事・育児の放棄。躁状態に偏っていて、ケバイ服で性を売るようになる。ウスバルは子たちを連れて別居して久しい。食事はシリアルか料理といえばアジの開きをフライパンで炒めるだけ。学校への送り向かいはやる。

尿に血が混じるようになるが 他のゴタゴタにかまけて、ほっておいた。
病院で検査すると前立腺がん末期と宣告された。骨、肝臓にも転移している。余命2か月。
霊媒の先輩仲間の女性ベアに、死を受け入れなさい、生前整理するよう促される。ついに娘に感づかれた。抱き合う。

ウスバルの後悔
タンスに隠して置いた全財産、札束を勘定する。ちょっとした額だ。家電・家具の中古ショップで、ガスストーブなどを買う。中国人たちが生活する地下室に備えるため自腹を切った。
ところが不完全燃焼による一酸化中毒で30人全員死亡。あわてた中国マフィアの男はバルセロナ沖に亡骸を捨てた。翌朝、砂浜に打ち上げられる。大ニュースになった。自責の念に耐えられぬウスバル「俺は誰に祈ればいいのか!」
ウスバルの父
会ったことはない。フランコ将軍に抗った父はメキシコに逃亡するが、着いてすぐに死亡。亡骸は防腐処理されバルセロナの墓地に埋葬されていた。そこへ墓地の立ち退きが始まり、父の棺を開けてみると若い凛々しい男であった。流れ星が心を横切る感じ。ウスバルは父との初対面に感動する。

残される子供たちのために、セネガル人のヘイ母子を自宅に住まわせた。向こう1年間の家賃や生活費を彼女に託した。だが、ヘイは子ども達を学校に送った後、ターミナル駅に向かうのであった。夫のいるセネガルに帰るために。
ラストシーン
雪の林のなかで若い父と出会う。父はウスバルに煙草をすすめる。会話は無いが互いの心は澄んでいる。父はウスバルに言う、向こうへ行こう。
★ ★
観終わった後のイメージがいささかボンヤリだ。
たくさんの要素を詰め込み過ぎたのか、いや、話のエッジが甘いんだ。惜しいな!
中国の市場経済への移行によって、本国からはみ出してしまった大勢の人々が不法移民として欧州に向かう。
また2002年以降から明らかにセネガルからの移民が増えているらしい。本当はフランスへ行きたい。
みなスペインをEUへの入り口と考えている。スペインやEUが考える移民政策の動向を見つめている。
北アフリカの政変はさらに不法移民を増やしているらしい。

脚本:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、アルマンド・ボー、ニコラス・ヒアコボーネ
撮影:ロドリゴ・プリエト
出演:ハビエル・バルデム (Uxbal)|マリセル・アルバレス (Marambra)|エドゥアルド・フェルナンデス (Tito)|ディアリァトゥ・ダフ (Ige)|チェン・ツァイシェン (Hai)|ギレルモ・エストレラ (Mateo)|ルオ・チン (Liwei)
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の映画
「気に入ってる、最近の映画」《まとめ》
そうなんです!本当にいい映画ってなかなか無いんです。
【 一夜一話の歩き方 】
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