映画「くちづけ」 監督:増村保造  主演:野添ひとみ

バイク

  テンポが古くない。
  前傾姿勢で突っ走る台本、細かい事にこだわらない姿勢。普通はあって当然のシーンを、ためらわずにザックリ切っている。ワイルドで素敵! そしてコミカルさが要所要所に入る。

ふたり  何より、野添ひとみがいい。
  体当たりで演技して映画を牽引しているが、さわやかさが前に立つのが魅力。
  このさわやかさと、川口浩のつたない演技が妙に合う。
  そして野添の、青春の女/大人の女をそれぞれに引き出すシーンがあなたを待っている。

  突拍子もないことを言うが、この映画、同じ年に製作されたイタリア映画、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の「さすらい」と、話の運びに通底するものを感じる。   



バス 小菅拘置所
  偶然、それぞれの父親が拘置されていた。面会に来たのが知り合うきっかけ。
  白川(野添ひとみ)の父は役所の職員で職場の金10万円を横領した。妻が結核で長期入院、その医療費が工面できなかった。母はこの事を知らない。自宅も無くなり白川は安アパートに一人住まい。稼ぎは絵のモデル。月6000円の月給。父の釈放、病院への支払いにまるで届かない。
  宮本(川口浩)の父は選挙運動違反で3回目。選挙に人生を投じた父を嫌い離婚した母はジュエリー斡旋販売で小金持ち、麻布あたり?の高級マンションのマダムになっている。宮本本人は東亜大学商学部の学生。アルバイトでミヤコベーカリーの配達ドライバー。三輪トラックだ。月給8500円。
  拘置所がある東京都葛飾区小菅、当時は土ぼこりが舞う殺風景な田舎だった事が映画でわかる。

 後楽園競輪場
  拘置所からバスに乗って宮本と白川が下りた場所がここ。
  試した車券が大当たり、十分なデートの資金ができる。
  東京メトロ丸ノ内線の後楽園駅駅前、つまり東京ドームや遊園地の一角にあった。

渚キ 江の島
  都内からバイクで江の島へ走るふたり。
  野添の水着スタイルが抜群、確か自分の3サイズを言うセリフがあった。
  都内の広い道路に車が見えない。国道一号線は田舎道。

 白川の住所 : 目黒区上目黒2-96紅梅荘内 
  分かりにくい細い道の先にあるらしい。

 宮本の住所 : 大田区雪ヶ谷町75
  一軒家。玄関をガラガラっと開けると、家政婦さんがお帰りと言って出迎える。

 増村保造の監督デビュー作らしい。また川口家の映画らしいが私には関心ない。
 とにかく、「くちづけ」や「バイク」というキーワードに力と輝きがあった時代を切り取っている映画です。


ポスター
監督:増村保造|1957年|東宝|
原作:川口松太郎|脚色:舟橋和郎|撮影:小原譲治|
出演:野添ひとみ (白川章子)|川口浩 (宮本欽一)
小沢栄太郎 (父・宮本大吉)|三益愛子 (母・宇野良子)|
村瀬幸子 (母・白川清子)|河原侃二 (章子の父)
若松健 (白川に言い寄る画家の息子・大沢和彦)|吉井莞象 (白川がモデルになっている著名画家・大沢繁太郎)|入江洋佑 (バイク屋の若旦那・島村)|見明凡太朗 (横河弁護士)|南方伸夫 (別所弁護士)|村田扶実子 (売店のおばさん)|小杉光史 (代書人)|ジョー・オハラ (モデルクラブ店主)|若松和子 (房子)|橋本敏子 (愛子)|須藤恒子 (ばあや)|高村英一 (夫)|清水谷薫 (妻)|西川紀久子 (パートナーの女)|米沢富士雄 (看守)|黒須光彦 (学生A)|伊藤直保 (学生B)|島田重雄 (学生C)|鍵山寿子 (女給A)|松平直子 (女給B)|山口健 (父親)|竹里光子 (看護婦)


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