映画「4:30」 (フォーサーティ)    監督:ロイストン・タン

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  映画が始まってまず感じるのは映像の美しさだ。
  ブルーからグリーンの色彩に透明感がある。光の扱いが巧みだ。

  ストーリーはストーリーと言えないほどに飾りっ気もない簡素な展開。
  登場人物はほぼ2人だけ。そしてセリフがほとんどない。観客に何も説明しない静かな映画。
  観る者は登場人物を観察し、心の中をのぞきに行くことになります。
  しかし重みはなく時に笑いを誘うシーンもあります。
  サウンドはリバーブ効かせたエレキギターを、音量ごく控えめに、前の音のリバーブの余韻を楽しみながら音数少なく手遊び的に思い出したようにつぶやく。

  少年シアオウーは11歳。
  父はいない。母はこの子をこのシンガポールに置いて北京に行っている。それなりに案じていて時折北京から電話してくる。「ご飯食べた?学校はどう?」
  そこそこお金はある様子。住んでるマンションはきれいだし家電家具もちゃんとしている。ただ、母不在でこの子にできる食事は即席麺と生絞りオレンジジュース。
  北京に行ってからどれだけ時間が経っているんだろうか、わからないが、少年シアオウーの心に変調をきたし始めている感じ。
日記
  小学校の授業シーンが何度も出てくる。もともと地頭は良さそうだ。ませている。だから学校では確信犯的に先生に反抗する態度。よく廊下に立たされている。例えば、夢をテーマにした絵の宿題で、彼は画用紙一面を黒で粗く塗りつぶす。先生は「それは何?」 シアオウー「夢はありません」
  日記を書いている。いや日記というより鉛筆書きのゆるい絵とメモ程度の覚書。そして何やら貼り付けている。彼の日記帳は一冊の単行本、ところどころのページにある余白に書き込んで大事にしている。

窓  ところでシアオウーの家には同居人がいる。韓国人の男性ジョン。美男子系31歳。ほぼハングルしかしゃべれない。シアオウーとの間に会話はない。ジョンが拒絶している。何者か分からないが母の愛人らしい。北京からの電話で母はシアオウーに「韓国のおじさん」と言っている。
  ジョンも変調の兆し。部屋で首つり自殺を敢行するが、コメディ的に失敗する。シアオウーに目撃される。いつも深夜帰宅、昼間は死んだように寝ている。それとヤケ酒。母との?写真を破り捨てる。シアオウーより幼い。

バス  一方、シアオウー11歳は洗面所でシェービングフォームをつけたり、鏡の前でジョンのパンツをはいてみたり、大人の真似事の時期。最近、ジョンに影響されてか、自虐的な真似、自殺な真似事をするようになってきた。シアオウーも押し詰まっている。
  父親がいないシアオウーにとって身近な男性はジョンだ。本当はジョンに父親的存在、兄さん的存在になって欲しいが彼は全くの無関心だ。
  かまって欲しい。眠りこけているジョンにこっそり悪戯をしかける。そのうち堂々と悪戯する。が反応がない。しかし、やっと扉がわずかに開き始めた。それは同時にジョンがここを出ていく決心のあらわれでもあった。

バス2

  すごく自然な演出のなかでシアオウー役のリユアンはなかなかの名子役。11歳の少年の世界観みせてくれる。しかしジョンについては脚本上で「木偶の坊」になっているらしく? ジョンの心理が読み取れない。だからジョン役はへたな役者にみえる? もうひと押し欲しいな。
  ロイストン・タン監督は他にない独特な世界を持っている。他の作品を観てみたい。

階段222監督:ロイストン・タン|シンガポール・日本|2005年|93分|
出演:シアオウー(シャオ・リユアン)|ジョン(キム・ヨンジュン)
                           窓辺

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やまなか
Posted byやまなか

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