映画「モーツァルトとクジラ」 監督:ピーター・ネス  主演:ラダ・ミッチェル

動物園にて

主人公  ドナルドとイザベルのラブストーリー。
  なんといっても、イザベル役のラダ・ミッチェルが光る。彼女がいてこそ映画になった。

  引っ込み思案で、口下手で自閉症の主人公ドナルドはタクシー運転手。前方不注意でよく衝突事故を起こす。なんで、タクシー会社2社目。
  もうひとりの主人公イザベルは、美容師。大きな絵を描くアーティストでもある。思ったことをバシバシ言う。はた目からは自己解放してるヴァイタリティある女性。動物園のマンドリルと会話ができる、世界でも稀な人間。
  そんなふたりが、ある時出会い、一目ぼれし合い、愛は続くかに見えたが、破たんしかけてハッピーエンドで収まる映画。

ミーティング  ところで「アスペルガー症候群」が、この映画のキーワードになっている。つまりドナルドとイザベルのふたりはアスペルガー症候群の患者ということになっている。
  しかし、上に書いたあらすじに「アスペルガー症候群」という服を着せただけの映画なので、キーワードは気にしない方が映画として楽しめる。自閉症だが頭のいい男(ジョシュ・ハートネット)と、自由奔放すぎる女(ラダ・ミッチェル)のラブストーリーで十分じゃないか、と思う。


  例えばドナルドがIBMの入社面接で落ちた理由を言うシーンがあるが、「アスペルガー症候群」にもう一歩踏み込むなら、「アスペルガー症候群」と、一口に言いきれないほどに様々な症状がある事を踏まえつつ、ドナルドとイザベルの、患者としての苦しみを、もっとていねいに描き込まねばならないだろう。

ラブ原題:Mozart and the Whale|
監督:ピーター・ネス|アメリカ|2004年|92分|
脚本:ロナルド・バス|撮影:スヴァイン・クローヴェル|
出演:ジョシュ・ハートネット (ドナルド・モートン)|ラダ・ミッチェル (イザベル・ソレンソン)
ゲイリー・コール (ウォレス)|シェイラ・ケリー (ジャニス)| エリカ・リーセン (ブロンウィン)|ジョン・キャロル・リンチ (グレゴリー)|ネイト・ムーニー (ロジャー)|ラスティー・シュウイマー (グレイシー)|ロバート・ウィズダム (ブルーム)|アレン・エヴァンジェリスタ (スキーツ)
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アスペルガー症候群を扱った映画 ~ 一夜一話からピックアップ
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  「シンプル・シモン」  監督・脚本:アンドレアス・エーマン|スウェーデン|2010年|
  スウェーデン映画です。 映像について言うと品のいいポップな仕上がり。わかりやすさに気をつかい 遊び心もある その映像は、饒舌と言っていい。アスペルガー症候群という あまり知られてない障害を持つ弟シモンと その兄サム、そして弟を好きになる女性ジェニファーの3人が主役だ。障害を持つ本人と家族の苦難、そしてそれを乗り越えようとする前向きな姿勢と挫折を、コミカルなタッチを交え 明るく表現されてるハッピーエンドな映画。北欧っぽいリリカルさも感じるかな。

  「音符と昆布」  監督:井上春生|2008年|日本|市川由衣、池脇千鶴、宇崎竜童が出演|
  お薦めは、こちらの映画だ。
  ひとりっ子だと思っていた、小暮もも。
  ドアを開けると、「小暮かりん、25歳」が立っていた。この時から、もも(市川由衣)の、おもいっきりの混乱が始まった。そして、ももの知らなかった人生が次々に明らかになる。「小暮かりん、25歳」(池脇千鶴)は、ももの姉だと自称する。かりんは、障がい者施設を脱走したらしい。
  父(宇崎竜童)に聞くと 「実は姉さんは先天的にアスペルガー症候群という障害をもっている。発達障害で自閉症。その障害は、こんなだ。会話のキャッチボールが苦手。話し方がまわりくどい。細かい所にこだわる。秩序・規則に異常に執着する。新聞記事や辞書・時刻表を鮮明に記憶するが言うほどに理解していない。音・光・味の敏感さ/鈍感さが共存。だから姉さんは幼い頃から友人ひとりいない孤独な子だ。」 
  「そんな姉さんが、人付き合いがだめで誤解されやすいのに、あえてやって来た。その理由は、たぶん、もも、お前だよ。」 

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やまなか
Posted byやまなか

Comments 1

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kayo  

これは公開時に銀座のシネスイッチで観ました。やまなかさんが仰るとおり、別に自閉症を取り上げる必要のない、単なるラブストーリーでした。誰だって自閉症(他人との距離感をとるのが下手な人)的要素は多かれ少なかれ持っているはず。ちょこっと不器用なカップルの恋愛話だわね(笑)。

2012/08/13 (Mon) 20:54

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