映画「動くな、死ね、甦れ!」 監督:ヴィターリー・カネフスキー

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雑踏でふたり第二次世界大戦が終わってすぐの頃、ソビエト連邦、シベリアの話。

ワレルカという、やんちゃな男の子は、学校の枠にはまらない。大きな悪戯をする一方、やはり子供、根は素直。母と二人暮らしだ。ガリーヤは同い年だが、女の子だ、ワレルカより大人びていて現実的。小さな青空市が開かれる日に、熱いお茶のポットを抱え、コップ一杯いくらで売って小銭を貯めている。この様子を見てワレルカも真似をし始める。ガリーヤはワレルカが好き。でもワレルカは12歳、恥ずかしくて避けている男の子。

帰りある日、ワレルカは町を離れる。鉄道線路のポイントを切りかえる悪戯で汽車を転覆させてしまったのだ。ガリーヤの機転で官憲を欺き、彼は貨物列車に飛び乗りひとり、港街ウラジオストックに出た。
この街で大変な目にあったのち、窃盗の兄ちゃんたちに交じる。宝石店あらしもした。しかし分かってきたことは、悪さの質が違った。ワレルカはこの一味から抜けたかった。おりしもガリーヤが突然現れて、ワレルカを助け出す。再び貨物列車に乗って、ふたりしてスーチャンに帰って来たが・・・。(左写真)

収容所彼らが住んでいる町は炭鉱の町。そして強制収容所だ。
当時はスーチャン(蘇城)と呼ばれた。シベリアの東端、海に近い。
この映画の監督ヴィターリー・カネフスキーはここで育ったらしい。彼の幼年時代を再現した映画だ。

反革命派とされた政治犯は、ソ連各地、特にシベリアに多数あった強制収容所に送られ重労働の刑を受けていた。鉱山や鉄道建設など、その労働はソ連の経済発展に寄与した。つまり無償の労働力なのだ。そして多くの囚人が刑期を終えることなく死亡した。
汽車また流刑にあっては、その犯罪者の一家全員が強制収容されるため、収容所では出産数が増え、幼児、子供の収容者が多かった。この映画でもたくさんの子供達が登場する。
映画には気のふれた学者が出てくる。反革命罪の罪人だろう。監督の父親は音楽家だったそうだ。
犯罪者の家族のうち、女性が収容所を出られるのは妊婦になる事らしい。こんなシーンがある。15歳になったばかりの少女が、ある少年に一生のお願い!といってセックスを求めるが少年は逃げる。彼女は、何が何でもスーチャンを脱出したいのだ。
日本兵なにしろ、この映画のこの町のシーンは、スーチャン強制収容所内の話であり、登場人物は官憲と罪人およびその家族なのだ。さらに、シベリア抑留、スーチャン収容所で強制労働させられる日本兵捕虜が加わる。(右写真)

荼毘2222ワレルカは日本兵たちと親しい様子。ある日、日本兵の誰かが死んだ。資源にならない石炭の山(ボタ山)で、日本兵が10人ばかり集まり、頭を下げて火葬が行われている。その儀式をワレルカは、ずーっと眺めていた。
この映画、こういった日本兵が出てくるシーンでは日本語の歌が流れる。「炭坑節」「南国土佐を後にして」「五木の子守唄」、監督が子供の頃スーチャンで覚えた歌らしい。

現在、スーチャンは、パルチザンスクと改名されている。


行進日本兵2英題:DON'T MOVE, DIE AND RISE AGAIN!|
監督・脚本:ヴィターリー・カネフスキー|ロシア|1993年|105分||
撮影:ニコライ・ラゾートキン|
出演 パーヴェル・ナザーロフ (ワレルカ)
ディナーラ・ドルカーロワ (ガリーヤ)
エレーナ・ポポワ (ニーナ(ワレルカの母))

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やまなか
Posted byやまなか

Comments 3

There are no comments yet.

kayo  

そうくるか(笑)。確かに寒そうだ。

2012/08/14 (Tue) 15:37

やまなか  

すごく寒そうだ。わたしゃ絶対住めない。
火葬のシーンが忘れられない。

2012/08/14 (Tue) 08:27

kayo  

これ、ACで観ました。Kさんもおすすめの一本です。少年と少女の甘酸っぱい関係がヒシヒシと伝わりました。非常に私的ながらも好感が持てますよね。

2012/08/13 (Mon) 20:51

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