映画「ラテンアメリカ 光と影の詩 」 監督:フェルナンド・E・ソラナス
2012年09月05日 公開

あまりお薦めしない映画だ。
でも時々、目を引く絵がいいので、とりあげます。
若い人が家を出る、旅に出るわけは、山ほどある。
南アメリカの先っぽ、つまり南端にあるフエゴ島。島唯一の高校、国立模範高校に通う主人公マルティン君。旅に出るには、ウッテツケのシチュエーションだ。父を捜して、メキシコまで三千里。様々な国と人々と自然にもまれながら自転車で舟で船でトラックでバスで列車で北上する。大忙しな南アメリカ縦断観光情報にみえる。我々にはTVで見慣れ過ぎたシーンもある。ま、ここまでが上映時間の大部分だが、つまらない。安っぽい青春おとぎ話。

それは当時のアルゼンチン当局への批判および、南米をはじめ、あらゆる既成概念に対する漠とした反発・抵抗。そしてそういった既成の体制や政権が、ほころび崩れ始めているぞ!的なメッセージだ。
さらに加えて、コミカルな表現と抱き合わせに、前衛っぽいイタズラを映画のあちこちに積極的に挿入している。この遊び精神はいいね。(大洪水の被害のなかの大統領→)
しかしだ、そもそも上に書いた「一方、作り手のメッセージは別にある。」というのが問題だね。意向がつながらないよ。何だね? この映画は。

フエゴ島の住民が見る朝の天気予報には、傾斜注意報がある。
「今日は島の統制解除により島全体が、右に32度、傾くでしょう」 そして島が傾斜しだすとさあ大変。高校の教室も街を歩く島民も。教会の鐘も勝手に鳴る。

高校には20人くらいの生徒しかおらず1クラス。教室は雨漏りじゃなく粉雪が降っている。


はじめに書いたけれども、この映画、ビジュアルな印象的シーンや不条理的記号が、あちこちに出てくる。
そこが見どころかな。例えば主人公マルティン君の旅はブエノスアイレスに立ち寄る。ここは大洪水の最中だ。また砂浜に打ち上げられた難破船の竜骨とか、絵の構図がいいシーンがある。
道路が冠水でボートで行く。 爆破されるビル ワルな高校生諸君




「父を捜して三千里」青春映画として観ると、こんなシーンがイメージに。
原題:EL VIAJE|
監督・脚本:フェルナンド・E・ソラナス|アルゼンチン、フランス|1992年|140分|
撮影:フェリックス・モンティ|
<アルゼンチンの映画 ~ 一夜一話から>
「ある日、突然。」 監督:ディエゴ・レルマン
お薦めです。いい映画だ。 繊細なので取扱い注意。
恋愛経験1度。さしたる明日があるわけでもなし。
アルゼンチン、ブエノスアイレスのランジェリー・ショップ店員マルシア。そのマルシアがある日突然、レズなカップル、マオ&レーニンにラチされる。でも暴力的ラチではなかった。マオの強引な口車に乗せられて・・・が9割、そしてマルシアの心に突如浮かんだ非日常への好奇心が・・・1割と、レズな気分少々。
「ルイーサ」 監督: ゴンサロ・カルサーダ
ブエノスアイレスの街や、地下鉄の車内・構内そしてサウンドが何度も映し出されて、ブエノスアイレス行ってみたい派には、嬉しいかもしれない。 コメディ&チョイ観光映画として観ましょうか。
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