映画「エイプリルの七面鳥」   監督:ピーター・ヘッジス

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  いい映画。
  場所はニューヨーク下町界隈のアパート。
彼  主人公のエイプリル・バーンズは、ボビーと貧しくも幸せに同居している。
  時は11月感謝祭を前にして。
  エイプリルは、ご無沙汰している家族を感謝祭の日によんで、このアパートで食事会をしようと計画した。それは、家を出てから久しく帰省してない事、その間に母ががんに侵された事、そういうことを彼女なりに考えての事だった。もちろん、以前のような自分じゃなく、今じゃNYでちゃんと生きてる自分を知って欲しかったし、ボビーも紹介したかった。

ガレージ  で、父親に相談した。
  父は家族皆に優しい。エイプリルの申し出を、父は家族に話した。当然・・・、「うちに来ればいいじゃん、母親は病気なんだから。」 「それに姉さんは生まれてこの方、料理したことない。」 そういう想定された意見が出た。だが、母親のジョーイは行くと言う。NYへ行く当日早朝、みなを起こして回る父は、ジョーイがいないことに気付く。なんと彼女は、準備万端、行く気満々、ガレージの車内助手席にひとりで、にっこり座っていた。

母娘  母ジョーイと長女エイプリル。
  ジョーイは、エイプリルの幼い頃から今まで、そのコトゴトクを嫌ってきたと家族に公言してきた。何しろ、そんな関係らしい。そんなふたり対決シーンは映画に出てこない。「がんになったのもエイプリルのせいだ。」 がんになって、うつになっての発言でもあろう。ただ、娘に会いに行くことを決めた母の心中を映画は語らない。(脚本いいね)
  母役のパトリシア・クラークソンが、このあたりの深い謎の事情を、セリフも出番も限られた中で、体現してしまう、あの雰囲気力・演技力。(さりげないんですがね、やっぱ助演賞)
車中  なわけで、気遣いしいの父親は、娘と妻や家族の間に立って、あれこれ苦心して来たんだろう事は感じられる。ま、それと、母娘、似た者同士は実は難しい。女友達みたく仲良しか、誤魔化して生きるか、・・・か。 

  母・ジョーイとは。
  例えばNYへの車中、息子のヘッドフォンステレオを取り上げ聴いて、おおいにダンサブルに乗っている。歌詞の色っぽさを大声で愛でる。ティーンエイジの女の子のようだ。家族はいつもの事として冷静だ。
  例えば、森の野生リスを轢いてしまう。母は、かわいそうと息子に命じて、家族全員で森に埋葬する。

  この一家、バーンズ家。
  ファストフード店のドライブスルーで、一般的には誰かが代表してメニューや個数を取りまとめて・・・だが、この一家、全員が自分の欲しいものを一斉にわめくのだ。そもそも変だぞ、この一家。だが、父だけは黙っている。
  こうしたコミカルさが映画の底辺を支えてみせる脚本です。

来ないいない  さてさて、こちらはNY。エイプリルの料理支度は。特に七面鳥の運命は。
  たぶん、ボビーと一緒に準備すれば、事無きを得たかもしれないんです。だが、それでは、エイプリルにとって、彼女の家族にとって、アパートの住人にとって、結果として驚きの!素晴らしい食事会にならなかった。
  なにしろ、振り返れば・・・冷凍ターキーに何やらを詰め込むまでは順調であった。だが、日ごろ靴入れスペースにしているガスオーブンが故障していたとは、神も知らぬこと。だって今日は感謝祭です。修理も頼めない。
  だから第二の難問は、日ごろまったくといっていいくらい付き合いをして無いアパートの住人たちに、オーブンを貸してくれとお願い、頼みまわる事。料理好きな黒人老夫婦に救われ、英語を話せないチャイニーズの家族に救われ、新型オーブンを購入したばかりの白人独身男に嫌われ、それはそれは大冒険。 
  アパートの入り口から階段室全部にリボンや色とりどりの風船を飾るもする、エイプリルの奮闘をお楽しみに!
  しかし、エイプリルが玄関に降りていくと、家族とその車がいないんです!!  

  涙腺ユルイ方、気を付けてください。あったかいです。
  実家の家族全員がNYへ行く、ロードムービーでもあります。一台の車に5人乗っていて、この一家の人間関係や個性が分かりやすくコミカルに描かれています。観客は事前にそんな予習をしながら、エイプリルが奮闘しているアパートに向かうわけです。脚本うまいなぁ。

途方にオリジナル・タイトル:Pieces of April

監督・脚本:ピーター・ヘッジス|アメリカ|2003年|80分|
撮影:タミ・レイカー|
出演:エイプリル・バーンズ (ケイティ・ホームズ)|母・ジョーイ・バーンズ (パトリシア・クラークソン)|父・ジム・バーンズ (オリヴァー・プラット)|妹・ベス・バーンズ (アリソン・ピル)|弟・ティミー・バーンズ (ジョン・ギャラガー・Jr)|母方の祖母・ドッティ (アリス・ドラモンド)|エイプリルの恋人・ボビー (デレク・ルーク)|新品のオーブンを貸してくれる独身白人男性・ウェイン (ショーン・ヘイズ)|ラトレル (シスコ)|エイプリルの料理を手伝う事にした中年黒人女性・エヴェット (リリアス・ホワイト)|ユージーン (イザイア・ウィットロック・Jr)|

                                           家庭科がAの妹ベス
組101
お世話になったアパートの人たちにも食事会に来てもらった。                   ガスオーブン・ライターはついた。


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