映画「白い息」/「ファの豆腐」監督:久万真路、「冬の日」監督:黒崎博  

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  「白い息」は、「ファの豆腐」と、「冬の日」の2本の短編映画で構成されています。 どちらの作品も、普通の生活の中で、普通の女性が、壁に突き当たり乗り越えていく姿を、詩情豊かに、すっきりした爽やかな緊張感のもと、生きいきと描いています。
  次世代クリエイターを発掘・育成するプロジェクト「コ・フェスタPAO」(2010年度 経済産業省)の一環として若手監督の育成を目的として制作された映画らしい。



ファの豆腐「ファの豆腐」

  題名の柔らかな響きが気に入りました。
  東京都江東区常盤のあたりでしょうか、こじんまりした商店街の、脇を入ったところにある豆腐屋が映画の舞台です。父親と、主人公で一人娘・朝子のふたり、二人三脚で店をやっている。母親は早くに亡くしたようです。

  夜明け前、商店街の街灯が連なって静かに灯っている。豆腐屋の朝はとても早い。眠いからだにむち打って着替える。起き抜けの眼に蛍光灯が まぶしい。父親はもうとっくに仕事をしている。
  朝子の仕事は、仕込みの補助と、自転車で街に出て豆腐を売り歩く。そう、豆腐屋のあのラッパを吹く。吹くが、ラッパの音の「トーフー」の「フー」、つまりラッパを吸い込む息が弱いので、「トーフッ」になってしまう。
  ・・・な、ことはどうでもよくて、朝子は悩んでいる。父と口論になった。そもそも、新卒時の就活が上手く行かずに、その末に仕方なく「家業に就職」することとなった朝子。当時、彼女は言った。「豆腐屋をやりたい。家業を継ぎたい。」
  実はウソだった。父親はその当時、豆腐屋をたたもうと実は思っていたのだが、娘に従った。そして父親はいま言う。「お前が豆腐屋をやりたくないなら、やめるよ。」
  朝子が豆腐屋をやめたくなったワケはふたつある。ひとつは嫌な感じで彼に振られたこと。もひとつは、毎日豆腐を買ってくれるばあちゃんから、毎日言われていたこと。「お宅の豆腐、昔はもっとおいしかったね。」
  さて、朝子は、自分の人生を、も一度考える時が来ている事を知る。

ファの豆腐 2  菊池亜希子と塩見三省の親子の演技は、奇をてらわず物静か。特に菊池の醸し出す優しい雰囲気が、映画全体のイメージを担っている。録音もいい感じ。
  話は簡単で先が読めてしまうが、とても丁寧な描写は好感が持てる。称賛したい。
  しかし、朝子が就活に失敗し家業に就職した経緯やその後の気持ちが、映画の後半になって突如語られる。また、幼なじみの彼に突然振られる事ふくめて、唐突感が先に立ち、どうもなじみにくく残念。もう少し話を練って欲しかったかな・・・。

監督:久万真路|2010年|40分|
脚本:本調有香|撮影:大塚亮|
出演:朝子(菊池亜希子)|朝子の父(塩見三省)|幼なじみの男(三浦誠己)|瀬能礼子|ともさと衣|須藤偉生|千葉ペイトン|



冬の日「冬の日」

  こちらの映画も、いい感じです。
  南魚沼市郊外の農村地帯、雪降る冬。北の冬を舞台にした事が成功している。映画のイメージが凛としてくる。もし夏が背景なら、話がダレるかも。
  一軒の写真屋が閉店作業をしている。父親は外出中。ひとり娘のリサが、東京から帰ってきて閉店の片づけを手伝っている。久々の帰省らしい。
  そこへ、幼なじみの男子の母親が現れる。写真を撮ってくれと言う。何か、背景が暗い感じだ。胃がんの宣告を今日受けたばかりとの事。家族にまだ話していない。幼なじみとは、リサの初恋の相手。母親もそれを知っていて、昔話に笑い合い・・・、次の瞬間、母親は気が沈んでいく。母親役は風吹ジュン。この辺りの演技が上手い。
  リサと父親の関係は伏せられているが、自分の心境を率直に吐露する相手じゃなさそうだ。
  さて、幼なじみやその母親との久しぶりの再会を機に、リサは東京でのフォトグラファーとしての成功と失敗、その後の心境をふたりに話す。そんな打ち解けた雰囲気に、何か救われた気持ちになるリサであった。そして・・・。

冬の日 2  この作品は28分、上の「ファの豆腐」は40分だが、短いとはまったく感じない。
  話の展開は本作のほうが上手い。また、壁を乗り越えようとする女性が、リサと幼なじみの母親というふたりの設定なので、話に厚みを感じる。ただ、ラストは再考願いたい感じ・・・。

監督・脚本:黒崎博|2010年|28分|
撮影:笠松則通|
出演:リサ(長澤まさみ)|リサの幼なじみの母親(風吹ジュン)|内野謙太|梅沢昌代|


こちらで、本作のような「静かな映画」(邦画編)を
厳選し、まとめています。
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やまなか
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