映画「ザ・フューチャー」 監督:ミランダ・ジュライ
2013年04月22日 公開
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深い映画です。
ソフィーとジェイソン、一緒に住み始めて4年になる。ワンルームの小さな木造アパート。ソフィーは近所で子供相手のダンス教室の先生。ジェイソンは在宅でひとり、ヘッドセットをつけてPCのヘルプデスクの電話対応業務をしている。ともに35歳。モラトリアムの有効期限が、さすがに、もう切れようとしている。
二十歳の頃から言えば、15年。
「若さゆえ、可能性は無限大」と自他ともに言える頃を、ふたりはそれぞれ謳歌してきたのだろう。自己弁護的に言えば、人生の前半は着々と準備してきた。でも何を準備してきた?
今から5年後は、40歳。
「いつまで生きれるのか」とか、これからを考えると変数の数が多い。でも、でもだ、変数がどう変わっても、これからの人生は、そうそう変わるものではないような気がする。こんな毎日が今後も続くの? それは良いの?悪いの?
そもそも、今まで、あるいは今、幸せ? じゃなきゃ、何時、しあわせになる?
ソフィーは、ネットを見ていて改めて思う。ダンス好きが自身の創作ダンスをネットで公開している。みんなセンスがあっていいと思う。自分も試してみたいが、あんな風に今っぽくはできそうにない・・・。そう、彼女は、若い頃から、いつも時代の先端を歩みたかったが、いわゆる時代に疎いタイプ、それは自分が一番よく分かってる。
ジェイソンは、若い頃、インターネットベンチャーにあこがれていたのかもしれない。ネットの技術やビジネススキル、勉強してもっと賢くなって、稼げるようになる・・・と思ってた、らしい。
少なくとも、今ふたりの生活レベルは、だいぶ低い。第一、車を持っていない。子供がいたらたぶん、そのレベルはギリギリ以下になるかもしれない様子。だからこそ、巻き返したい。これから何かすごいことをする! してみたい。
世間のしがらみを一旦、捨てて、何かしよう。(「何か」というところが辛い・・・。)
ソフィーは30日間、毎日新しいダンスを創る。ジェイソンは、町内でひとりでやっている緑化運動のオジサンを手伝うボランティア。つまり、戸別訪問して苗木を売り歩く。がしかし、ともに上手く行かない。
女性は、やはりコワい。
そんな最中にソフィーは、妻を亡くした子持ちオジサン40歳台と気が合い、ベッドを共にする仲に急発展。オジサンは広告看板屋を自営していて生活レベルは高く安定している。包容力もある。アパートの荷物をまとめてオジサンの家に転居する! ソフィー「このシーツ、肌触りがとてもいいわ。」 オジサン「そりゃ、高級品だからね。」
もちろん、足元すくわれたジェイソンは、この事態を受け入れがたく、悲しみ悩む毎日。さて、ソフィーとジェイソン、この先どういう顛末になりますやら・・・。
さて、この映画にはサブ・ストーリーがある。ソフィーとジェイソンが、左前足を重傷の猫を発見し、近所の動物シェルターに運び込み、傷の手当をお願いし、回復すれば引き取る手筈をする。その名をパウパウと名付ける。
この猫が全体のストーリーのナレーション、特に二人の心の動きを語る仕立て。語り口は、人生の大先輩的な感じ。かつ、パウパウの入退院時期を、ソフィーとジェイソンの時の流れの時間軸に仕立てている。
また月も語ります。ソフィーの心離れをジェイソンが嘆くシーンでは、お空のお月様が彼に語りかけ、慰め諭す。
このふたつから、ディズニーの「ふしぎの国のアリス」のチェシャ猫を連想させます。
あわせて、ジェイソンには不思議な能力があります。こういった不思議フレーバーを振りかけて、ちょっと痛い映画をファンタジー味に作っています。
ソフィーが時代の流れに疎い事が語られますが、監督自身も何かそういった不器用さを自覚しているのでしょうか。そこらへんをオリジナリティに昇華させられると理想なんでしょうね。
Tシャツに全身を入れて、もがくソフィー。(浮気先の家で)
これで彼女は、羽化できたのだろうか?

オリジナル・タイトル:The Future
監督・脚本:ミランダ・ジュライ|ドイツ、アメリカ|2011年|91分|
撮影:ニコライ・フォン・グリーニベニッツ、エリオット・ホステッター|
出演:ジェイソン (ハミッシュ・リンクレイター)|ソフィー (ミランダ・ジュライ)|マーシャル (デヴィッド・ウォーショフスキー)|ジョー (ジョー・パターリック)|
◆ ミランダ・ジュライ監督の映画 ~ 一夜一話より
「君とボクの虹色の世界」
クリスティーン(ミランダ・ジュライ)は魔女のよう、この街に小さな幸せを作り出す。お話は、なかなか複雑に凝ってます。単にクリスティーンとリチャードの恋物語の映画じゃない。色味がきれいな映画です。
クリスティーンは独身。映像系のアーティストとして食べていきたいが、今は高齢者介護タクシーで生活している。地元にある美術館で、作品を全国公募していた。キュレーターのナンシーが企画するアート展だ。 ◆ 「君とボクの虹色の世界」のページへは、こちらから。
ミランダ・ジュライ監督の映画
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ソフィーとジェイソン、一緒に住み始めて4年になる。ワンルームの小さな木造アパート。ソフィーは近所で子供相手のダンス教室の先生。ジェイソンは在宅でひとり、ヘッドセットをつけてPCのヘルプデスクの電話対応業務をしている。ともに35歳。モラトリアムの有効期限が、さすがに、もう切れようとしている。
二十歳の頃から言えば、15年。
「若さゆえ、可能性は無限大」と自他ともに言える頃を、ふたりはそれぞれ謳歌してきたのだろう。自己弁護的に言えば、人生の前半は着々と準備してきた。でも何を準備してきた?
今から5年後は、40歳。
「いつまで生きれるのか」とか、これからを考えると変数の数が多い。でも、でもだ、変数がどう変わっても、これからの人生は、そうそう変わるものではないような気がする。こんな毎日が今後も続くの? それは良いの?悪いの?
そもそも、今まで、あるいは今、幸せ? じゃなきゃ、何時、しあわせになる?
ソフィーは、ネットを見ていて改めて思う。ダンス好きが自身の創作ダンスをネットで公開している。みんなセンスがあっていいと思う。自分も試してみたいが、あんな風に今っぽくはできそうにない・・・。そう、彼女は、若い頃から、いつも時代の先端を歩みたかったが、いわゆる時代に疎いタイプ、それは自分が一番よく分かってる。
ジェイソンは、若い頃、インターネットベンチャーにあこがれていたのかもしれない。ネットの技術やビジネススキル、勉強してもっと賢くなって、稼げるようになる・・・と思ってた、らしい。

世間のしがらみを一旦、捨てて、何かしよう。(「何か」というところが辛い・・・。)
ソフィーは30日間、毎日新しいダンスを創る。ジェイソンは、町内でひとりでやっている緑化運動のオジサンを手伝うボランティア。つまり、戸別訪問して苗木を売り歩く。がしかし、ともに上手く行かない。
女性は、やはりコワい。
そんな最中にソフィーは、妻を亡くした子持ちオジサン40歳台と気が合い、ベッドを共にする仲に急発展。オジサンは広告看板屋を自営していて生活レベルは高く安定している。包容力もある。アパートの荷物をまとめてオジサンの家に転居する! ソフィー「このシーツ、肌触りがとてもいいわ。」 オジサン「そりゃ、高級品だからね。」
もちろん、足元すくわれたジェイソンは、この事態を受け入れがたく、悲しみ悩む毎日。さて、ソフィーとジェイソン、この先どういう顛末になりますやら・・・。

この猫が全体のストーリーのナレーション、特に二人の心の動きを語る仕立て。語り口は、人生の大先輩的な感じ。かつ、パウパウの入退院時期を、ソフィーとジェイソンの時の流れの時間軸に仕立てている。
また月も語ります。ソフィーの心離れをジェイソンが嘆くシーンでは、お空のお月様が彼に語りかけ、慰め諭す。
このふたつから、ディズニーの「ふしぎの国のアリス」のチェシャ猫を連想させます。
あわせて、ジェイソンには不思議な能力があります。こういった不思議フレーバーを振りかけて、ちょっと痛い映画をファンタジー味に作っています。
ソフィーが時代の流れに疎い事が語られますが、監督自身も何かそういった不器用さを自覚しているのでしょうか。そこらへんをオリジナリティに昇華させられると理想なんでしょうね。
Tシャツに全身を入れて、もがくソフィー。(浮気先の家で)
これで彼女は、羽化できたのだろうか?

オリジナル・タイトル:The Future
監督・脚本:ミランダ・ジュライ|ドイツ、アメリカ|2011年|91分|
撮影:ニコライ・フォン・グリーニベニッツ、エリオット・ホステッター|
出演:ジェイソン (ハミッシュ・リンクレイター)|ソフィー (ミランダ・ジュライ)|マーシャル (デヴィッド・ウォーショフスキー)|ジョー (ジョー・パターリック)|

◆ ミランダ・ジュライ監督の映画 ~ 一夜一話より

クリスティーン(ミランダ・ジュライ)は魔女のよう、この街に小さな幸せを作り出す。お話は、なかなか複雑に凝ってます。単にクリスティーンとリチャードの恋物語の映画じゃない。色味がきれいな映画です。
クリスティーンは独身。映像系のアーティストとして食べていきたいが、今は高齢者介護タクシーで生活している。地元にある美術館で、作品を全国公募していた。キュレーターのナンシーが企画するアート展だ。 ◆ 「君とボクの虹色の世界」のページへは、こちらから。
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