「人生なんて、そうそう うまく行かないワケよ。」  映画ピックアップ  一夜一話より

  悲しい映画。
  人生なんて、そうそう上手く行かないワケ。
  そんな登場人物の「心のひだ」に感応して、涙して。
  穏やかなハッピーエンドだと、ほっとほんのり安堵する。
  こっちの気持ちも、ほぐれてくる。そんな幸せもある。
  こんな気持ちで、ただぼんやりしている時間も欲しいものだ。

  悲しみで終わる映画もある。
  明と暗。「明」の裏に影があり、「明」と「暗」の間には、人の数だけ、あやがある。
  だから、どんな結末であれ、こんな映画をつくる人達の、とりわけ俳優の力が試される。
  そして、今のあんたも、試される。
  
【 日本 】

女性7「祇園の姉妹」  監督:溝口健二  主演:山田五十鈴
  姉妹で芸者をしてる、その妹(山田五十鈴)は女学校卒で、昼は流行ファッションを楽しんでいる。この彼女を当時の現代的女性として代表させ、観客も、彼女の目線でもって祇園を見る。
  1936年この時代、芸者はその手の女性がやる商売なんだといった通念が一般的だったかもしれない。男性優位の時代、わけても祇園は女性差別が特に露出する街なわけだ。しかし、映画はそんな状況をかき分けるようにして、祇園の女の立場から祇園を描く。脇役がしっかりで安定感を感じる。
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雅子「魚影の群れ」  監督:相米慎二  主演:夏目雅子、緒形拳
  ある日、翌日になっても夫が帰港しない。連絡も無い。トキ子(夏目雅子)は渋る父親に捜索を願う。夫が見つかった時、彼はマグロ用の太い釣り糸に絡まって腹部破裂状態。しかし、それでもマグロと格闘していた。帰港途中に父親の胸の中で夫は息を引き取る。生まれてくる子供は、ぜひ漁師にしてくれと、言い残して・・・。
  漁船と漁業組合事務所との無線のやり取りを脇で聞きいて事態が明らかになっていくトキ子。彼女は無意識に事務所の机をたたいて調子をとり、涙声で唄いだす。
  ひとつ 日なたの山道を  ふたつ 二人で行きました  みっつ 港の蒸気船
  よっつ よそから着きました  いつつ 急いで行ってみれば・・・・・
  ついに堪え切れず、彼女は事務所の外へ駆け出して海に向かって叫び、大泣きするのであった。
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女性8「縮図」  監督:新藤兼人  出演:乙羽信子、山田五十鈴
  銀子(乙羽信子)は、東京は佃島の貧しい路地の奥で生まれた。
  芸者あっせん業(女衒)の紹介で、銀子は芸者見習い(仕込みっ子)として千葉の置屋に入る。田舎芸者のスタートだ。そののち、今度は夜汽車に乗って、雪深い越後高田の旅館/置屋に行く。 三度目は、東京の芳町(日本橋人形町)という上級な花街にある置屋だ。ひたすら芸者の道を歩む。そうしないと両親や妹たちは暮らせなかった。銀子は気立てが良く気がまわる。幼い恋もした。田舎では地場の大店の息子に惚れられたが、しょせん正妻として迎えてくれない。
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ジョゼ「ジョゼと虎と魚たち」  監督:犬童一心  主演:妻夫木聡、池脇千鶴
  恒(妻夫木)は、ジョゼ(池脇千鶴)に惚れた。ジョゼは児童養護施設から出て、ばあさんが育て上げてきた。
  ジョゼは下半身不随。障害がある女性に回りの粗野な男達は黙っていない。女所帯だからこその問題も含め困難を抱え、ばあさんは世間を乗り切ってきた。だから今までどんな男も、ばあさんのバリヤーでジョゼに近づけなかったのに、恒がスイスイ侵入できたのは、ジョゼが恒を愛しているからこそ。
  この二人が恒の実家へドライブする。しかし恒は途中で気が変わり実家へは行かず小旅行に切り替え海に行ったりラブホテルを楽しんだり。
  ジョゼは初めから知っていた。実家には行かないだろうことを。そして今が二人の愛の頂点であることを。・・・やがて恒は彼女(上野樹里)の元へ帰っていくだろう。 
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女性12「パーマネント野ばら」  監督:吉田大八  出演:菅野美穂、小池栄子、池脇千鶴
  さびれた小さな漁港、まともな人は、もうとっくに町を出て行ってしまった。町に一軒だけの美容室・野ばら。ここに自ずと女たちが集まる。パンチパーマをしてもらいながら、飽きもせぬ尽きもせぬY談花盛りのオバちゃん達。 主人公ナオコ(菅野美穂)はこの美容室が実家、子連れで出戻っている。一見、何事もなさそうな彼女だが、実は、彼女は幻影の高校教師と付き合ってる。その姿は誰にも見えない。だが、みんな知っている・・・。哀しみと笑いがブレンドされた大人味の映画。
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ヴァイブレータ「ヴァイブレータ」  監督:廣木隆一  出演:寺島しのぶ
  自分を、懸命にしょい込んでいるふたり。フリーライターと長距離トラック運転手。
  似た二人。ああ、切ないくらいにマジメなふたりだ。
  女は精神的に追い込まれていて、嘔吐が絶えない。頭の中では、もうひとりの声が饒舌。
  深夜のコンビニで始まり、同じコンビニで終わる、このトラックの旅は、饒舌な声が語った一瞬の夢なのかもしれない。
  うずくまる者にとって新鮮なのは、車窓の景色、知らない風。そのすがすがしさが、この映画の基調。
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【 ヨーロッパ 】

話1「ひかりのまち」  イギリス  監督:マイケル・ウィンターボトム
  いい映画だ。 観たあとに、ジンワリほっとする映画だ。
  ロンドンに住む「中の下」くらいの人々が生活する街。普通の人々の、よくある話だが、いっしょになって観客も悩み、最後は喜びを共にできる。緊張感は強いられない。話はゆるりと てんでバラバラに展開するが後半になるに従い、複数のエピソードがある一点に向かって寄り集まっていく。
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話2「秘密と嘘」  イギリス  監督:マイク・リー
  いい映画だ。さりげない語り口。暗い映画じゃない。観終わった後は、さわやか。15年前の映画なのに今もレンタル屋さんに並んでいる。
  中年女性シンシアが、苦難の末に心の奥にしまい込んだ自分の過去。それが突然現れた女性によって、白日の下に引き出されてしまい、悲しみの淵に落ちていく。が、しかしその女性の素直さが不思議にもシンシアのトラウマを洗い流す。消してしまいたいその過去とは、・・・。
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話3「BIUTIFUL ビューティフル」  スペイン  監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
  重い映画です。場所はスペイン・バルセロナ。映像は闇の中であやしく押し黙り、そして雨に濡れて にじむ光のように美しい。
  主人公ウスバルの生業は、アフリカ系・中国系の不法入国移民に非合法な就労斡旋。ビルの地下に多くが寝起きしている。純粋に人助けの気持ちもある。ウスバルのもう一つの生業は、葬儀時に最後の言葉を聞く交霊、霊媒、そんな異能を持つ。妻は双極性障害を発病して久しい、子供がいる。さらにウスバルの余命がもう無い。だから、ウスバルは子達を託した。八方ふさがりだが、昇華していく。
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話4「ザ・フューチャー」  ドイツ  監督・主演:ミランダ・ジュライ
  深い映画です。ソフィーとジェイソン、一緒に住み始めて4年になる。ワンルームの小さな木造アパート。ソフィーは近所で子供相手のダンス教室の先生。ジェイソンは在宅でひとり、ヘッドセットをつけてPCのヘルプデスクの電話対応業務をしている。ともに35歳。モラトリアムの有効期限が、さすがに、もう切れようとしている。
  二十歳の頃から言えば、15年。今から5年後は、40歳。だからこそ、巻き返したい・・・。
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話5「5時から7時までのクレオ 」  フランス  監督:アニエス・ヴァルダ
  パリに住むクレオ。シングル盤3枚を出している駆け出しの歌手。持ち歌は、古いシャンソンスタイルから抜け出したポピュラーソング。お金持ちのパトロンがいる。
  クレオはこのところ、腹部に違和感を覚えるらしい。病院で検査した。その検査結果は今日の7時に分かる。その可能性もある。それまで待つ。夏のパリは午後10時位まで明るいらしい。まして今日は夏至らしい。
  医師から結果を聞いたクレオの表情が硬く辛い。Antoine!しっかり支えてやれ。アルジェリアに行くのは止めておけ。
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話6「ソフィアの夜明け」  ブルガリア  監督:カメン・カレフ
  オランダで結婚に失敗。いろいろあって薬物中毒でブルガリアに戻ってきた。
  運だめしに人生やりなおし38歳、自称画家。とは言え、つまりは精神科クリニック通い、メタドン治療の日々。実家には17歳の弟・イオルギがいる。家出して、彼女を連れてイツォの住む部屋に転がり込んできた。絵を教えてくれと言う。イツォのなかで温かいものが動き始めた。
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やまなか
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