特集「やはり、大人の映画ってある。」 邦画/洋画ピックアップ
2010年01月01日 公開
やっぱり、大人の映画ってある。
もちろん、R-18指定みたいなことじゃない。
お子ちゃまじゃ、映画が言ってるその奥が理解できない。仕方ない。
映画の表面だけ、かいつまむと、印象の薄い作品に思える。
あるいは、必要以上に難解な映画、と思ってしまうかも。
ある歳にならないと、わからないってことがある。
偉そうに言うわけじゃない。
邦画、洋画をピックアップしました。
【 日本 】

戦中や終戦直後の大混乱期から、少しは抜け出したかどうかの時代だ。
これからを生きる世代たちは、いやがおうにも復興のエンジンと化している。あるいは、そんな時代の空気に呑みこまれる。世の中ギシギシしている。気持ちがいっぱいで余裕を持てない。
一方、戦前戦中、終戦を当事者として生き、これからは余生を生きようという世代たちは、次代の急坂を登る気はもうない。「東京物語」は、こんな世代間の断層を真正面から語る映画。
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立場の違う多くの登場人物の思いを、肩に力を入れず上手に描きわけ、各人が織り成す当時の柳橋の空気を生き生きと映し出している。名画です。
東京、隅田川沿いにある由緒、格式ある芸者の街、柳橋。
つた奴(山田五十鈴)は器量・芸・品ともに、この街では名が知れた華やかな芸者だった。旦那ができ娘の勝代(高峰秀子)が生まれ、置屋「つたの家」を営み商売繁盛、しかし旦那は去ってしまった。昭和も30年代に入り花街の景気に、そろそろ影が差し始めていた。
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ライトタッチなコメディ。 語り口がスピーディで小気味いい映画。
だがきっと、ライトに思えない向きもいるだろう。なぜなら・・・
1. 主要登場人物は、木村佳乃・富司純子以外、おじさんばっか。
2. ストーリーは、すべて通夜が舞台で、死んだ人の思い出話ばっか。それも故人の、隠されてきた失敗談を掘り起こして、あげつらって大笑い。
3. 卑猥な下ネタ満載。猥談や、卑猥な歌詞のお座敷小唄の数々。
4. 死んだ人の遺体を抱き上げて立たせて、カンカン踊りをする。
だからヘビーで濃いコメディか・・・。なるほど。
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喜劇です。R15+ 指定のハッピーエンドもの。
石川省吾(ミッキー・カーチス)は妻に先立たれて、この一軒家で一人住まい。息子は結婚して、もっと市街に近い所に別居している。 省吾は、解離性同一性障害(多重人格障害)らしい。家にいるはずが、意識がふっつり途切れて、外を歩いている。そして田んぼのあぜに倒れ込む。近所の人からの連絡で、長男夫婦が駆けつける。そんなことが度々ある。夫婦はイヤイヤながら同居を考えざるを得ないが、とりあえず住込みの老人介護ヘルパーを付けようということになった。
省吾の担当になったユミ(丸純子)がやって来た。本人曰く、老人好き。ツッケンドンな嫁に比べ、はるかにやさしく応対してくれる。息子夫婦にペルパーを押し付けられた事への反感と、「老人介護」そのものに嫌悪感があった省吾も、徐々にではあったがユミのふるまいに心が緩んでいく。そして、孤独感から解放され、実に久々に心が安らぐのであったが・・・・。ここから話は、奥へと進む。
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【 ヨーロッパ 】

主人公のスピロは、妻子を残してロシアへ亡命していった。スピロは彼の地で家庭を持ったが、32年経って望郷の念でギリシャに帰国した。その間、妻のカテリーナはひたすら彼の帰りを待っていた。映画はここから始まる。 カテリーナ、息子や娘、そして親戚たちは、スピロの突然の帰国を「一応」歓迎する。しかしそんな歓迎は彼にはどうでもよくて、実は故郷の村にいち早く行きたかった。彼の一徹さは変わらない。スピロとカテリーナは、32年間彼女が守ってきた家に帰ってきた。彼は安堵した。そして、村の様子は一変していることに気が付いた。
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欲と雑音に気をとられ 忘れている、生きるって何? 原点に帰ると、生きるのバリエーションを教えてくれる。それは薄々感じていた事に意外に近い。
貧しい大地に住む、年老いた人達の生活を綴ったドキュメンタリー映画。
村の一員として生活する老人もいるが、多くは村から遠く外れて納屋のような、あばら家で孤立独居する。僅かばかりの畑を耕し鶏を飼う。電気も水道もガスもない。馬車に住む羊飼いもいる。1970年代、スロヴァキア共和国のファトラ山地の荒野に、こういった人々が点在していたらしい。
一様に身寄りがない人々だ。戦争や病気で家族を失った人。結核になったため辺鄙なこの地に隔離された人。たぶん、村八分にされた人。流れてきた人。 何かしらの理由で社会からこぼれた人々だ。しかし、人間、どんなことがあっても、命果てるまで生きる。
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アメリカンな大型トレーラーが行き来する、砂漠の一本道。
見渡す限り周辺に何も無い、虚夢なロードサイドにポツンとあるカフェ。
砂あらしで、日々微妙に磨り減っていく、こころ、会話、そして存在感。
こんな場を舞台に、10数人の登場人物だけで映画は終始する。
セリフはわずか。沈黙の時間の方が長い。しかし、その沈黙のベールは思いのほか重くない。
観終えた後に来る、じんわりとした安堵感。
一方、すべてを捨て去った後にだけ、歌うことを許されるような主題歌「Calling You」の、遠くから聴こえてくる、ひんやりした悲哀。 大人のおとぎ話だ。
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大人の映画です。
日ごろ、姉ちゃん味、坊ちゃん味の人には、ビターです。
分かりやすい起承転結の映画じゃないので、あらすじと言えるあらすじもないし。おおげさじゃなくて、やはり、ある程度に歳を重ねて、自分の人生、生活経験がないとピンと来ないかも。
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しっかり作られた、いい映画。
主人公は、フランスの著名なミュージシャン、セルジュ・ゲンスブール。恋多き波乱万丈の生涯を楽しく描きます。監督はフランスの漫画家で本作の原作者。だから伝記くさくない。娯楽映画に仕上がっています。
セルジュ・ゲンスブール(1928年-1991年)はソングライターで歌手。その性向は無頼で女好き。多くの曲を女性歌手に提供しフランスのポップスをリードしてきた男。 女性を魅了する歌詞とそのメロディは、ジュリエット・グレコやブリジット・バルドーをも引き寄せる。彼のそんなカリスマ性と幾多の恋の遍歴は生涯続くのですがね・・・。
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しっかりした大人の映画です。注目は、登場人物の人物描写だ。起承転結みたく、ストーリーに大きなうねりはないが、次々に登場する人物の描写が、さりげなくも、深い。手を抜かない。丹念に映画いている。これがこの映画の見どころです。
元妻や愛人や友人たち、そして医師・言語聴覚士などの医療スタッフ、それぞれのセリフに充分な吟味がなされている気配。リアル感がある。
そして全身麻痺の難病になった主人公もまわりの人も、慌てない、情に流されて泣き叫ばない。一歩一歩から始める、始まる。どれほど現実的なことか。 まわりの映画が子供じみて見えてくる。
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車はそこで止まった。
右に行けば警察署がある。左はワルシャワへの道だ。
当たり前の事に直面した時、事が単純なほどに、人は思いのほか逡巡する。
うつろに揺れるヨットの上、登場人物3人のこころの描写が大人味。脚本は、まったく騒がない。ジャズサックス・ソロのだるい旋律が湖面を流れる映画。
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北欧の、とても地味でスローな喜劇映画。
凛とした空気のなかで紡ぎ出される細やかな情景と、歳を重ねた男の「不都合な友情」が描かれている。フォルケとイザック、このふたりの男の友情が結ばれるまでの、奇妙ないきさつと終焉をご覧ください。ただし、話の奥行きに手が届かないと、意味不明は映画になる可能性があります。
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「パラダイス3部作(愛/神/希望)」より 2014.4.8追記
宗教をテーマにする、かなりビターな喜劇です。人の業と言いましょうか。しかし映画は、コミカルな語り口を忘れずに、人の業をえぐり出します。このコミカルさの妙味がピンと来ないと、ただ重いだけの映画に観えてしまう。アンナ・マリアは敬虔なカトリック信者だが、イスラム教の夫が家を去ったあと、信仰が先鋭化していく。家全体を聖なる空間、パラダイスにした。そして突然の夫の帰宅で話は・・・。 映画評はこちらから。
【 アジア、ロシア 】

見ごたえがある。2組の家族の間で起こる、ささいな事から始まる いさかい事を映画は、上手にスリリングに語る。 それぞれの夫が、金のため、家族の将来のため、社会的な地位のため、はたまた大人の意地を通したいがため売り言葉に買い言葉、見る見るうちに、張りあう意地が上塗りされていく。勢い、嘘も方便に猜疑心。だんだん大ごとになって裁判に。
こんな大人たちを、じっと見ている、双方の家族の娘。映画は、一貫してこの子たちの視点にいる。そして、この娘たちが、それぞれの置かれた立場で、振る舞うその行為に着目を。
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素晴らしい映画だと思う。
先に言うと、子供が主人公の映画じゃないですから誤解ないように。
2000年当時の台北、誰にも当てはまる普通の生活風景が活写されている。そして人生の縮図、山あり谷あり、その時々の知恵のチップスが、映画の中にちりばめられています。
家族一人ひとりの話、その親類・友人・隣人の話、ヤンヤンの父さんのビジネス話、父さんの昔の恋人との再会などなどエピソード満載ですが、しっかりした脚本のもと、継ぎはぎ感をまったく感じません。滑らかに次々に人々の人生の節目を垣間見ることになります。人物描写が優れていて、それぞれが映画の中でいきいきと振舞います。
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40数年、音沙汰が無かった。ある日突然、元夫が会いたいと言って来て、上海に住む一家に騒動が起きる話。
面子を大事にする中国人たちが、この件で誰がどう立ち回るのでしょうか? 60歳をゆうに過ぎた大人3名つまり夫婦と元夫は、落としどころをどうするのでしょうか? そのあたりを見守りながら、話は右往左往しながら進んでいきます。
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【 ラテンアメリカ・メキシコ 】

いい映画だ。 メキシコの風が吹いてます。
女性が監督した、こまやかな情感が素晴らしい。美しい映像が目を引きます。地味な映画ですが、見逃さないで欲しい。
質の高い映画が世界的に激減している今日この頃、多くの人がこの作品を観ることで、監督の才能をさらに開花させたい思いに駆られます。
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【 一夜一話の歩き方 】
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