映画「黒猫・白猫」 監督:エミール・クストリッツァ
2013年05月24日 公開

ジプシーの映画ですが難しくなく、万人向けです。
気楽に観れますが、そのクオリティはとても高い娯楽喜劇映画です。
ヤクザのダダンは、白く長い車体のリムジンをご愛用。
写真奥は大河・ドナウ河だ。

2組の男女のラブストーリーを軸に、ユーゴスラビアはドナウ河沿岸に住む、荒くれのジプシー・ギャングたちの悲喜こもごもを、常に前向きに明るく描きます。元気がもらえます。ダンサブルなジプシー音楽が常に流れている映画です。実に大勢の人々、たくさんの動物が登場する、賑やかでとてもクレージーな映画です。ハッピーエンドな最後まで130分間、一気にみせます。

入院中の祖父ザーリェは、工場を地場のヤクザのボス・ダダンに売って、多額の現金を手にしていた。老い先短いと感じるザーリェは、この金を孫のザーレに譲ろうとしている。ばか息子マトゥコに期待はまったくない。孫のザーレ19歳は、このあと、美しい女性イダに出会う。
マトゥコとザーレふたりの稼業は、家の前を流れるドナウ河を航行中のロシア貨物船に近寄って行き、船員から洗濯機など家電を売り、ガソリンを買う商売だ。ザーレは双眼鏡でいつもドナウを行きかう船舶を見てロシア船が現れると緊急出動する。ま、いつもだましだまされる、やばい商売。
上写真、ゴッドファーザー。
下写真、ダダン。その昔ゴッドファーザーがイタリアにいた頃、
ダダンはその手下だった。


ま、しかし、この手の話はうまくいかないモノで、結局、話はゴッドファーザーから地場のヤクザボスのダダンに降りてきて、ダダンのいいようにされてしまった。ほんと、悪い奴ほどよく笑う。


この成り行きを挽回するため、ふたつのことが行われた。
ひとつは愛する孫を救うべく、祖父のザーリェは悪魔を呼び、自ら死への旅に出る。葬式の日に結婚式は行えないのだ。だが、マトゥコとダダンは彼のしかばねを屋根裏に隠し、結婚式を決行した。
もうひとつは、式の席から逃げ出したいアフロディタを、ザーレは彼女に秘密の通路を教え逃亡を助けた。イダの指示で、式に参加しているジプシーの子たちもこの逃亡を助けた。さあ、ことは発覚して、マトゥコとダダンやその子分たちは、式場をあとにアフロディタを追跡し始める。彼女は林の中に入り込んだ。

諸事情を理解したゴッドファーザーは、グルガとアフロディタ、そしてザーレとイダの二組の結婚式を、今すぐ行おうと、マトゥコとダダンに指示をする。人々は、式場にもどり二組の結婚式をはじめる。

そしてフィナーレ、ザーレとイダはドナウを航行する客船に乗り込み、この地を後にする。祖父ザーリェからの現金を胸に。
なんとも、エネルギッシュな映画だ。
イダ役の女優ブランカ・カティチ、マトゥコ役のバイラム・セヴェルジャン、ダダン役のスルジャン・トロヴィッチの3人以外はジプシーの人々だそうだ。

監督:エミール・クストリッツァ|フランス、ドイツ、ユーゴスラビア|1998年|130分|
脚本:ゴルダン・ミヒッチ|撮影:ティエリー・アルボガスト|
出演:マトゥコ(バイラム・セヴェルジャン)|ダダン(スルジャン・トロヴイッチ)|イダ(ブランカ・カティク)|ザーレ(フロリアン・アジニ)|Sujka(リュビシャ・アジョヴィッチ)|ゴッドファーザーGrga Pitic(サブリ・スレジマニ)|“Big Grga”Grga Veliki(ジャセール・デスタニ)|“Small Grga”Grga Mali(アドナン・ベキール)|祖父のザーリェ・Zarije Destanov(ザビト・メメドッフスキ(ザビット・メフメトフスキー)|“Ladybird”Afrodita(サリア・イブライモヴァ)|Customs Officer(ストジャン・ソティロフ)|Black Obelisk(ゼダ・ハルテカコヴァ)|プレドラグ・ペピ・ラコビッチ|プレグラグ・ミキ・マノジョロビッチ|
この活劇を後ろであやつるのは、この白猫黒猫と、ゴッドファーザーだ。

ダダンとゴッドファーザー。悪い奴は風呂が好き。

「これが美しい友情の始まりだ。」とゴッドファーザーに言われる、マトゥコとダダン。

アンガス・フレーザー (著) 平凡社
<売り文句>流浪・漂泊の民というステレオタイプを排し、20世紀までの歴史を精緻に論じた決定版。
「はじめに」から抜粋引用
彼らは何世紀にもわたって明確なアイデンティティを守りとおし、適応と生存の驚くべき能力を発揮してきた。実際、彼らがなめてきた辛酸を考えれば、生き延びてきたという事実それだけでもたいへんな偉業である、と結論しないわけにはゆかない。これから展開される物語の大半は、その独自性を破壊しようと他者が彼らに何をやって来たかの歴史である。しかし、ジプシーが「ヨーロッパの民族」であることは、普遍的に認められた真理とはいいがたい。(引用終)
ドナウ河の流域と黒海。

ここに、エミール・クストリッツァ監督の作品をまとめています。
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