映画「一瞬の夢」 監督:ジャ・ジャンクー

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頼りない男の話。
映画はこの男の宙ぶらりんさを通して、中国の地方都市に住む人々の、変化の過渡期にある、不安定なこころのざわつきを描く。

頼りない男のシャオウーは、スリを稼業とする。年端もいかない若い手下3人を使ってこの街でスリをし日銭を稼いでいる。
実家シャオウーは三人兄弟の末っ子。兄たちは結婚しちゃんとした仕事をしてる。両親は今も畑を耕している。健全な家族に、この異端児シャオウーだ。すぐむかつくし、ちょっとしたことですぐ気分を損ねる。ガキだ。
ヨンと若い頃はヨンと悪仲間でスリをしていたが、彼は今や街のちょっとした青年実業家、とはいっても輸入たばこを闇から仕入れて稼いでいる。かたやシャオウーはあいかわらずだ。
ヨンが結婚する。シャオウーは最近になってこのことを知った。そんなに疎遠になったふたり。シャオウーは金を工面して結婚祝い金をこしらえてヨンのところへ持って行くが、彼は受け取ることを拒む。スリのシャオウーから金はもらえない、街の名士のメンツに傷がつくと言いたい様子。


カラオケボックスこんなことがあって、いや、いつもだが、シャオウーはふさぎ込んで無口、そして仏頂面で不満顔、実は奥手で引っ込み思案。ヨンを見て自分は商売に向いてないと思う一方、何か商売でもして稼ぎたいと思ってる。

メイメイワーッとひとりで騒ぎたくてカラオケに行って、メイメイという女性と知り合う。店の外に連れ出して街をぶらぶら歩く。彼女は遠い実家に電話する。母親に嘘の近況を伝えているのをそばで聞くシャオウー。何か自分に近いものを感じるのであった。
互いにポケベルを手にいれて連絡し合うことになる。


部屋後日、風邪をひいて店を休んだメイメイの部屋を訪れて、ふたりベッドの上でお話。だけ。だが互いに愛が芽生えたことを確認できた。
そしてある日、シャオウーが再度、部屋を訪れると、メイメイは引っ越ししていて部屋はもぬけのからだった。聞くところによれば、お金持ちのいい人と発って行ったらしい。
部屋の真ん中で、ぼんやりと立ちつくすシャオウーだった。


逮捕また、もとの生活に戻る。
スリをしてヘマをやり捕まる。その時にポケベルが鳴ってしまった。交番に連行され手錠をはめられた。窓から街の人々が覗いている。(右写真)
警察署へ歩いて連行される途中、警官は途中である店に立ち寄る。その際、まるで犬の散歩中にくさりを留め置くように、シャオウーの手錠を電柱のワイヤーにつないで行った。
路上0街行く人々は、シャオウーの周りを取り囲み始める。冷たい視線。逃げ場のないシャオウー。

モラトリアムというんじゃない。これだ、というグッと来るモノが見つからない、見つけられない。アイデンティティの喪失なのかもしれない。
地方都市といえど、時代の波をかぶる。人々のこころの持ちようが変わる。取り残される焦燥感、昨日と今日、そんな見えない亀裂に落ち込んでしまった主人公なのかもしれない。亀裂に落ち込んでしまうほどに、主人公は繊細で鋭敏な感性を持っているのだろう。
野外撮影シーンの背景には、たくさんの一般市民の好奇の目、けげんそうな目が映っている。これがなぜか怖い。


人々オリジナル・タイトル:小武 (XIAO WO) (シャオウー)
監督・脚本:ジャ・ジャンクー|中国、香港|1997年|108分|
撮影:ユー・リクウァイ|
出演:ハオ・ホンジャン|ズオ・バイタオ|ワン・ホンウェイ|マー・ジンレイ|

街


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