映画「理髪店の娘」 監督:シャーロット・リム  シネ・マレーシア2013★マレーシア映画の現在(オーディトリウム渋谷)

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母と、一人娘のフェイ (右)

  マレーシアの都市マラッカの話。
  小さな美容院を営む母と、一人娘フェイの二人暮らし。
  フェイは、母親のずいぶん若い時の子だろう、親子に大きな歳の差がない。

  母親に彼氏ができた。
  若い格好して、いそいそと出かけていく。相手はだいぶ年下らしい。近所でこのことを知らない住人はいないくらい噂は広まっている。彼氏は酒を呑むと人格変わって暴力をふるうらしい。デートして怪我して帰ってくる。
  それでも母の愛は冷えないでいる。彼氏はスクリーンに姿を見せない。

  フェイは初潮を迎えている。
  二階の寝室で、窓を開け放ち、板の間に伏せっている。静かな街。陽射しが透明だ。

  孤独な者同士の親子。
  互いに、言い争いはするものの、寄り添って生きてきた。
  何があっても、これからも寄り添って生きていきたい。そう思う。口に出さない、ふたりの本音。
  ふたりでひとつ。どちらかが、欠けると成り立たない。


屋根







  言葉を尽くしても、伝えきれない事、その事のほうが大事なことかもしれない。 
  だからか、この映画はセリフがほとんどない。
  「目は口ほどに物を言う」というが、この映画は、表情で感情を伝えることを、あえて避ける。
  表情でもって伝えられない事、その事のほうが、大事なことかもしれない。
  手先、足先、背中で、例えば精神的に弱った母のために、フェイが食パンにマーガリンを塗る、その手先だけのシーンで、十分に登場人物の感情が表現できる。
  例えば、足。コンクリートに滑らかな塗装を施したリビングの床、古びてあちこち少しでこぼこしている、そのへこみにドリアンの種がひとつ転がっている。母と話すフェイの足が、ドリアンの種と手すさび、否、足すさびの様子を、カメラは静かに長回しでとらえる。言い争いから、母がフェイのほおをはたく、ふたりの足だけを写す。去る素足のフェイと、立ちつくす母の足は、デートのサンダル。といった具合だ。
  「詩」と言える映像のつくりだ。
  観る者をくぎ付けにする、その緊張感は、快感に近い。
  シャーロット・リム監督が作り出す映像のトリコとなる観客は多いと思う。

  カメラは、手持ちではなく、いつも、どっしり三脚に据えて、しっかり計算されている。映像は実に繊細で細やかだが、その芯はキリリとしているのは、このせいだ。

鏡


オリジナル:タイトル:理髪店的女児
英語タイトル:My Daughter
監督:シャーロット・リム|マレーシア|2009年|76分|
出演:FOOI MUN LAI(フェイ)|THIAN SEE CHUA(フェイの母)|WEN HAUR LAM(ハイ)|

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やまなか
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