映画「大阪ストーリー」   監督:中田統一  大阪の在日韓国人一家のドキュメンタリー

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  自分の家族一族郎党を赤裸々に撮影対象としたドキュメンタリー映画。
  私小説というなら私映画だが、その世界は、こじんまりしていない。幅と奥行きに、在日韓国人の戦後発展の歴史と、日韓の国際性と、差別問題を含み、実に中身が濃い。とにかくパワフルに繁栄する元気なご家族たちだ。
  映画にしようとした選択と意図がよく分かる。
結婚
  終戦直後のことだ。在日韓国人の父、日本人の母は、大阪・鶴橋の闇市で知り合い、恋に落ちた。母の一家は猛反対であった。その後7人の子供達は元気に育って今に至る。
父  父親のご商売は、金貸し業。お客も会社の従業員も、みな在日韓国人だ。それと、パチンコ店を3店経営している。どちらの業種も、在日が手掛けやすかった。商売はうまくいっている。社車は運転手付の大型ベンツ。問題は後継者だ。

  この家の長男は、この映画監督の中田統一。イギリス留学中で映画を勉強している。映画の中で、家は継がない、結婚もしない、と宣言している。

弟  次男は若い時分に統一教会に入り、父親から勘当されて韓国へ渡る。教会で韓国女性と知り合い、今は日本に戻り、父親の元で後継者修行に精を出している。孫も生まれた。
  姉のひとりは、日本人男性と恋におち結婚。やはり父親から勘当をくらった。この夫婦は現在、父から一番疎遠な位置にいるらしい。
宴  あとの兄妹達とそれぞれの家族は、映画後半で、一族郎党の大宴会があるので、様子が垣間見れる。高校生の大きな孫から赤ちゃんまで、孫は10人位はいそうだ。

母  さて取材対象として欠かせないのは両親だ。
  監督は、母には親しく接して、たくさん取材している。一緒に出かけ市場やデパートで撮影し、台所でも話を聞く。愚痴も聞く。
  もともと性が合わない父親との取材に監督は及び腰だ。父親も避けている。一定の距離をとったインタビューが笑える。
墓参  だが、父親とふたりで韓国へ行く。墓参りもする。韓国では、父親は表情が明るいし、周りから一目おかれる人物らしい。そうだろう、在日での成功者ですから、村の人たちの面倒も何かとみてきただろう。
  そうそう、監督も薄々しか知らなかったが、父親には韓国にも奥さんがいた。子供もいる事がわかる。どうやら、父親はこの女性を正妻としている。この女性にもインタビューしている。


  逃げない、隠さない。ここまで徹底した取材姿勢で臨んだ映画に拍手を送りたい。
  在日韓国人という世界をわかりやすく学ばせてもらった。
  観る側が」、父親の視線で観ることができれば、この映画の深みを より知ることができると思う。
  ただ、この映画のソフト(VHS)はもう手に入らないだろう。

  以下、作品自体ではない、こういう情報(額縁情報)を記載するのは好きではないが、この場面では載せておきたい。
  1994年 シカゴ国際映画祭ゴールド・ヒューゴ賞
  1994年 バンクーバー国際映画祭審査員特別賞
  1994年 国際学生映画祭グランプリ
  また、当時イギリスでは、ゴールデンアワーにBBCで放映されたらしい。

組2 1
監督:中田統一|イギリス|1994年|77分|ドキュメンタリー|
撮影:サイモン・アトキンス|
出演:監督の一族郎党のみなさん|



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