映画「ソレイユのこどもたち」   監督:奥谷洋一郎  ドキュメンタリー

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老人と愛犬ジャッキー、川をゆく。

  羽田空港のそば、東京都大田区の多摩川河口付近を流れる「呑川」という川が、このドキュメンタリー映画の舞台のようだ。

川








  話の背景から、みてみようか。
  呑川は、以前からプレジャーボートの係留場所として利用されて来たが、個人所有船舶の不法係留が多く現在も続いているらしい。老人を訪ねてきた都職員のシーンが映画冒頭にある。まずは不法係留船の撤去だろうが、たぶん、東京都が呑川でやりたい整備とは、この川が流れ込む海老取川で計画中の整備内容と同じなんだろうか。映画に出てくる、羽田ボランティア推進の会という団体も運動を展開している。、
  海老取川の河川整備 http://www.kensetsu.metro.tokyo.jp/河川整備計画/pdf/ 外部リンクです。

  この老人は、この呑川で生きてきた。
  漁師じゃない。呑川に浮かぶ小型船舶とりわけプレジャーボートのエンジン修理を職としてきた。
  小さなモーターボートからお金持ちの大型船舶まで様々だが、どの船も、この呑川に係留されていて、老人は発注があるたびに、川を上り下りして係留されている場所に行って修理をしてきた。川の人間だ。
  だが陸の人間つまりプレジャーボートの持ち主たちの世界は別にある。親が所持していた船が遺産相続で・・・、会社資産の船が倒産で・・・、など一時のバブルが、その後の放置、不法係留につながる。
  こんなことで修理の仕事が激減していく。
  だが、老人に残された道があった。例えば、親の船だったが、子は ほとんど利用しない利用できないが、残しておきたい。不法係留を承知で、老人に僅かな金でメンテナンスを、密かに、直接頼んでくる。彼らの本心はエンジン修理ではない。台風時前などに係留をしっかり確認しておきたい。そんなニーズを老人は束ねて現金収入を得、ギリギリの生活で生きている。結果、束ねる不法係留船が100隻とかになっている。 
  で、もう一方の陸の人間、大田区や海上保安庁やらが老人にせまる。このあたりは、海べりだから、河川区域と港湾区域とが重なる地区らしく、老人にとってもややこしい。 だが、こういった社会的問題は老人のせいじゃない。 
ソレイユ
  老人はホームレスか。 
  老人は犬たちと、不法係留(投棄)された船上で生活している。
  投棄されていたモーターボートを修理して自家用船にしている。この船を足にして、呑川のあちこちに係留されている船をネグラにしている。犬たちは陸に上がらない。 釣りをして魚をとる。ドックフードが無くなると、杭にびっしりついたフジツボがエサになる。
  汽水地区のヨシが生い茂る川岸に、捨てられた、朽ち行く船がある。ここも彼の家だ。ぬかるんでいるが唯一、陸にある家。 彼が面倒みている犬の一匹、白い犬ソレイユがここで子を産んだ。白が4匹、真っ黒が1匹。

老人と犬

  以上のようなことを背景とする映画だが、意外にも静的で幻想的印象を受ける。
  川、風、雨そして空と海。陸の人間が日ごろ目にしない辺境の空間。無色透明だが、ある種のフィルターをかけたような、厳しくも幻想的映像。

  写真家・石内都の 「tokyo bay blues」を思い出す。
03289478_20130804231012029.jpg  抜粋・・・そんなことは御構いなしに都市の陸側はずっと前に海や港の存在をスッパリ切り捨て見向きもしなくなっている。海べりは単に海運の現場であり工場内であり陸の人間は立ち入れないし、またそもそも関係ない場所である。だから陸の都市の人間が「都市の海べり」に立ち向かうと戸惑う・・・。
  一夜一話の掲載記事 「tokyo bay blues」は、こちらから。  


監督・撮影・録音・編集:奥谷洋一郎|2012年|104分|
公式サイト:http://www.cinetonium.com/  外部リンクです
ソレイユ (soleil) とは、フランス語で太陽の意味。


羽田ボランティア推進の会
http://pvhaneda.jimdo.com/呑川の不法係留/ 外部リンクです。

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