映画「モル」 監督:タナダユキ
2013年09月11日 公開


インディーズ喜劇です。
映画中のあちこちで、怒号の関西弁が痛快に爆発する。血しぶきも飛ぶ。
歯に衣着せぬ、その発言は、例えば、こんな風。
「なんでアタシばっかり、こんな目に合うんや!」
「アタシら女はなぁ、毎月血だらけになっとんのやぁ!!」
「生理とか女とか、どうでもええねん! どうやったら上手に人のこと好きになれんやろなぁ~」

ほんま、可愛い。
しかし、映画は決して関西風な、こてこてではない。清々しいくらい、さらっとした感触だ。そこがいい。

ゆかりは、生理が重い。重いだけじゃない。最近、生理になると、決まって不思議なことに遭遇するようになった。
彼女が街を歩いていると、ビルの屋上やら高い所に立つ男の気配に、ふと気付く。そして、見上げると、その見知らぬ男と視線が合う。合ったような気がする。なぜなら、ゆかりは近視だ。見えるわけがない。そして彼女は思う。まさに自殺しようとしている瞬間だと。いやや!

一度だけじゃない。これまでに、もう30回以上、経験してきた。
そして、今日も、男がいた! 失神するのを堪えて、ビルの階段を駆け上がる。


見兼ねた自殺願望男は、柵の向こう側で、彼女の話を聞いてやることになる。今は、はかないモデル。ほんまは女優になりたい。でも思うようにならなんのや。予約のキャンセルが起因して全ての予約がキャンセル??、キリンのオーディション不合格やら、いろいろあって・・・。(この、いろいろが面白い)
ゆかりのこの不思議な不幸に、彼女の彼氏や新たな恋人たちとのあれやこれやが絡んでいくストーリー。
ゆかり、どの恋もうまく行かない。だから、余計に鬱積するものが大きくなっていく。そんな関西弁のドタバタです。
彼女に見えるビル上の男たち。あれは、関西風のベルリンの天使か。ビリケンか。
ラスト。ウクレレ弾き語りでタナダユキ監督が歌う唄が、なんともいい。すべて許す。

高熱を下げる座薬は、もう要らない。
監督・脚本:タナダユキ|2000年|76分|
撮影:久保延明、山田麻理枝|
出演:タナダユキ|石川貴子|岩波才靖|水田真靖|日名拓史|
タナダユキ監督の映画
【 一夜一話の歩き方 】
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