映画「いつか読書する日」  監督:緒方明  主演:田中裕子、岸部一徳

上
カイタ

  高梨槐多(岸部一徳)は、橋の上でぼんやりしていると、背後から大声で 「カイタ!」 と呼ばれ、思わず振り返った。男は50歳。日ごろ、名前を呼び捨てにされることはない。ギクリとした。 一方、「カイタ!」と呼んだのは、大場美奈子(田中裕子)50歳だった。
  ふたりは、中学生のころ、この街で恋人同士だった。
  その後、ある事があって別れてしまった。高梨槐多はのちに、容子(仁科亜季子)と結婚し、市役所に勤め、この街に住んでいる。大場美奈子はやはり、この街に住んでいて、朝は牛乳配達、昼はスーパーのレジで働いている。未だに独身。ふたりはともに、この長い間、心の中で愛する気持ちを押し殺して生きて来た。

美奈子  高梨槐多の父は名の知れた画家で、槐多が中学の時、妻を亡くし独身であった。大場美奈子の母も、夫を亡くしていた。いつしか、槐多の父と美奈子の母は、愛し合うようになった。大きな街ではない。噂はすぐに広まった。中学生の槐多と美奈子にとって、親の醜聞は耐えがたいものであった。 そんなある日、噂のこのふたりは交通事故であっという間に他界してしまう。この大事件に中学生のふたりの心は押しつぶされてしまう。そして別れた。その後は一度も会っていなかった。

容子00  槐多の妻・容子は自宅で病に伏せている。
  長い間、寝たきりである。死期が迫っていた。槐多は妻の介護に献身的だ。 だが容子は前々から思っている。夫の気持ちが自分に向いていないと。もちろん、槐多はそんなことはないと、その都度否定してきた。しかし、父の死後、槐多は「自分の気持ちを殺して生きるのだ」と決心していた。普通に地味に事務的に生きるのだと。裏返せば、槐多には父と同じく、自由奔放な芸術家の血がながれているらしい。
  妻が槐多に言った怨みの言葉が忘れられない。 「自分の気持ちを殺すって、まわりの気持ちも殺すことなんだからね。」
  死期を感じる容子は、女の直感である決断をする。自分が死んだら、あなたは大場美奈子と生きて欲しいと。そして大場美奈子を家に呼んで、同じことを彼女に伝えた。
  容子が死んだ。
その後  ふたりは、おずおずと、後ろめたくも、せきを切ったように愛し合うようになる。槐多は美奈子に、これからすることがいっぱいあると言う。そして美奈子は言う。 「全部、して。」  
  だが、映画はその先を許さない・・・・。


  こんな幸せもあるんだと映画は言う。長く埋もれた愛。
  しかし結末が安易だな。

下監督:緒方明|2004年|127分|
原案:緒方明、青木研次|原作・脚本:青木研次|撮影:笠松則通|
出演:大場美奈子(田中裕子)|高梨槐多(岸部一徳)|高梨容子(仁科亜季子)|皆川真男(上田耕一)|高梨陽次(杉本哲太)|大場千代(鈴木砂羽)|スーパー店長(香川照之)|皆川敏子(渡辺美佐子)|田畑牛乳店店主(左右田一平)|渡辺看護師(神津はづき)|
美奈子は、彼女を幼い時から知る近所のおばちゃん皆川敏子(渡辺美佐子)の家に呼ばれて
女ふたりで飲む時間が幸せであった。母娘のようだ。

組00
                       高梨槐多の妻・容子(仁科亜季子)は、・・・。

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