映画「PicNic ピクニック (完全版)」 監督:岩井俊二 主演:チャラ、浅野忠信
2013年10月01日 公開
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チャラを観る映画。
前近代的な精神病院で出会った女と男の話。
ココ(チャラ)は、両親に付き添われ、運転手付きの高級車に乗せられ、この病院に着いた。両親は、白衣の人達に連れられて病棟に消えていく娘を、淡々と見送った。
彼女は黒いカラスの羽飾りを身にまとっていたが、入院患者として白い服を強制される。病室はガランと広い個室だった。
ココは双子の姉。相手を「自分のニセモノだ」とする言い争いから妹を殺していた。殺したその時、正直、気持ちが清々した。だが、ココは思った。もう、この世を終りにしたい。いつしか「あたしが死ねば、この世は終わるのよ。」そう思うようになっていた。
ツムジ(浅野忠信)は、ココより先に入院していた。
彼は小学校の時に、担任の先生からいじめを受けていたらしい。これが彼のトラウマとなった。中学生になっても高校生になっても、この担任の幻影が彼の目の前に現れては、小学校の頃の何かに付けて、彼を責めては厳しく問いただす。
ついに彼は本物の先生を刺し殺した。
だが、今も幻影が病室の壁から突如現れては、彼を苦しめている。
どうあがいても、このしつこい幻影から逃れられないツムジは、地球滅亡を望むようになる。 (確かに、この先生の霊が結構怖い。)
ある日、ツムジはサトル(橋爪浩一)と連れだって密かに散歩に出ようとしていた。これを見たココも彼らに付いて行く。ただし病院の塀の上を伝い歩く、子供の遊びのような散歩だ。高い所は楽しい。気が晴れる。ただ、平衡感覚と足元に注意がいる。
塀の上のココが足元からふと目を上げると、先を歩いていたツムジとサトルが折り返してきた。「あそこから先へは、行っちゃいけない。」とサトルが言う。ココは構わず、塀の上の、その先へどんどん伝い歩いて行く。
ツムジもココを追って、「行っちゃいけない」隣の塀の上に立った。そして拒むサトルの手を引っ張った。
病院に帰って来たココとツムジは、病院の看護師たちから、お仕置きを受ける。ふたりは特別な部屋に入れられて、何本ものベルトでベッドに拘束され、太い注射器で鎮静剤を打たれた。
夜中に、密かにツムジの拘束ベッドに上がり、彼にまたがって欲望を満たす女医。この部屋のそばには、鉄棒をはめた檻(おり)付きの牢屋のような病室があり、閉じ込められた多くの患者が、この様子を見入っている。
朝方、ツムジは担任の幻影にうなされている。ココは隣のベットからツムジをじっと見つめている。そしてツムジを呼んだ。彼はやっと正気をとりもどし目を覚ます。ココはツムジに人を殺した人間の臭いを感じる。
「7月10日がこの世の終わりだ。」とツムジが言う。「地球の最後を見に行くの。」とココが合わせる。「また、お仕置きされるぞ。」とサトルが退く。「地球最後の日だから、病院に戻る必要はないのよ。」とココが言い、サトルは妙に納得した。
そんなことで、ある晴れた日、ココ、ツムジ、サトルの三人は、意気揚々と塀の上伝いのピクニックに出かけた。
「行っちゃいけない」その先を、いくつもの塀を伝って歩いて行くと、思いのほか遠くへ行ける。うれしい。丘も野原も河も橋もビル街も線路も見える塀の上を、伝い歩いて行く。

だが、途中で3人は、はぐれ出す。ふたりを振り返らずにどんどん進むツムジ。何度も道草をくって遅れたサトルは、誤って高い塀の上から落下し、ひとり野原の真ん中で息を引き取る。ココも気が付けば、周りに誰もいない。あてもなくツムジを追いかける。そして、塀の上で担任の霊に怯え泣き叫んでいるツムジを発見した。やっぱり、ツムジは人を殺した人間の臭いがする、「あたしと同じ」 とココは確信した。
それから、ふたりは港に向かう。その先は沖へと続く一本の細い防波堤。並んで沖へと歩いた。
小さな灯台に着く。ここが本当に行き止まりだ。
ツムジは、ここへ来る途中で入手した拳銃を夕陽に向けて、数発撃った。太陽が死ねば地球は滅亡すると。
その直後に、ココは言った。「あたしが死ねば、この世は終わるのよ。」
彼から奪った拳銃で、すぐさまココは自分の頭を打ちぬいた。ツムジのために。
周囲に黒いカラスの羽が舞い続けた。


監督・脚本:岩井俊二|1995年|68分|
撮影:篠田昇|
出演:ココ:チャラ|ツムジ:浅野忠信|サトル:橋爪浩一|
牧師:鈴木慶一|女医:伊藤かずえ|看護長:六平直政|看護婦:山本ふじこ|看護婦:佐山真里|看護婦:武藤寿美|警察官:島村日出夫|ココの父:加太孝明|ココの母:山口詩史|教会の少女:久野優理|教会の少女:高橋麻衣|教会の少女:曽我真奈美|街頭芸人:チャックと豆の木|
岩井俊二監督の映画です。

チャラを観る映画。
前近代的な精神病院で出会った女と男の話。
ココ(チャラ)は、両親に付き添われ、運転手付きの高級車に乗せられ、この病院に着いた。両親は、白衣の人達に連れられて病棟に消えていく娘を、淡々と見送った。
彼女は黒いカラスの羽飾りを身にまとっていたが、入院患者として白い服を強制される。病室はガランと広い個室だった。
ココは双子の姉。相手を「自分のニセモノだ」とする言い争いから妹を殺していた。殺したその時、正直、気持ちが清々した。だが、ココは思った。もう、この世を終りにしたい。いつしか「あたしが死ねば、この世は終わるのよ。」そう思うようになっていた。

彼は小学校の時に、担任の先生からいじめを受けていたらしい。これが彼のトラウマとなった。中学生になっても高校生になっても、この担任の幻影が彼の目の前に現れては、小学校の頃の何かに付けて、彼を責めては厳しく問いただす。
ついに彼は本物の先生を刺し殺した。
だが、今も幻影が病室の壁から突如現れては、彼を苦しめている。
どうあがいても、このしつこい幻影から逃れられないツムジは、地球滅亡を望むようになる。 (確かに、この先生の霊が結構怖い。)

塀の上のココが足元からふと目を上げると、先を歩いていたツムジとサトルが折り返してきた。「あそこから先へは、行っちゃいけない。」とサトルが言う。ココは構わず、塀の上の、その先へどんどん伝い歩いて行く。
ツムジもココを追って、「行っちゃいけない」隣の塀の上に立った。そして拒むサトルの手を引っ張った。

夜中に、密かにツムジの拘束ベッドに上がり、彼にまたがって欲望を満たす女医。この部屋のそばには、鉄棒をはめた檻(おり)付きの牢屋のような病室があり、閉じ込められた多くの患者が、この様子を見入っている。
朝方、ツムジは担任の幻影にうなされている。ココは隣のベットからツムジをじっと見つめている。そしてツムジを呼んだ。彼はやっと正気をとりもどし目を覚ます。ココはツムジに人を殺した人間の臭いを感じる。

そんなことで、ある晴れた日、ココ、ツムジ、サトルの三人は、意気揚々と塀の上伝いのピクニックに出かけた。
「行っちゃいけない」その先を、いくつもの塀を伝って歩いて行くと、思いのほか遠くへ行ける。うれしい。丘も野原も河も橋もビル街も線路も見える塀の上を、伝い歩いて行く。

だが、途中で3人は、はぐれ出す。ふたりを振り返らずにどんどん進むツムジ。何度も道草をくって遅れたサトルは、誤って高い塀の上から落下し、ひとり野原の真ん中で息を引き取る。ココも気が付けば、周りに誰もいない。あてもなくツムジを追いかける。そして、塀の上で担任の霊に怯え泣き叫んでいるツムジを発見した。やっぱり、ツムジは人を殺した人間の臭いがする、「あたしと同じ」 とココは確信した。

小さな灯台に着く。ここが本当に行き止まりだ。
ツムジは、ここへ来る途中で入手した拳銃を夕陽に向けて、数発撃った。太陽が死ねば地球は滅亡すると。
その直後に、ココは言った。「あたしが死ねば、この世は終わるのよ。」
彼から奪った拳銃で、すぐさまココは自分の頭を打ちぬいた。ツムジのために。
周囲に黒いカラスの羽が舞い続けた。


監督・脚本:岩井俊二|1995年|68分|
撮影:篠田昇|
出演:ココ:チャラ|ツムジ:浅野忠信|サトル:橋爪浩一|
牧師:鈴木慶一|女医:伊藤かずえ|看護長:六平直政|看護婦:山本ふじこ|看護婦:佐山真里|看護婦:武藤寿美|警察官:島村日出夫|ココの父:加太孝明|ココの母:山口詩史|教会の少女:久野優理|教会の少女:高橋麻衣|教会の少女:曽我真奈美|街頭芸人:チャックと豆の木|
岩井俊二監督の映画です。
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