映画「M/OTHER (マザー MOTHER)」  監督:諏訪敦彦  主演:三浦友和、渡辺真起子 1999年

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  普通の劇映画とは、だいぶ違う。
  いわゆる脚本に該当するものがない。脚本と言わないで、「ストーリー&ダイアローグ:諏訪敦彦監督、三浦友和、渡辺真起子」としている。もちろん、ストーリーのアウトラインはあらかじめある訳だが、各シーンは、監督と出演者間の共同作業で出来ていく。感性や共感を互いに現しながら、話し合って創造していく。
  俳優は、台本に書かれたセリフを言うのではなく、自分の言葉で話す。普段の語り口になる。演技というより「地」に近い。撮影は、撮りっぱなし。1シーンがやたら長い。録音は、マイク1本。向こうの部屋に行った俳優の声は、小さく聞き取りにくい。だから映画館で観るにはいいが、家で観る場合は、音量を上げておくか、集中力を維持しておく。静かな映画だから、爆発音など大きな音はないから大丈夫。

ふたり  離婚した。
  夫・哲郎(三浦友和)は、妻と子供を残して家を出た。今は、アキ(渡辺真起子)という女性と共同生活している。
  哲郎とアキは、仕事に生きている。互いに相手を束縛しない生き方。アキはデザイン事務所経営。哲郎は飲食店を経営している。ふたりの住まいは、新築の家。2人が住むには広すぎるほど・・・。


上2 80  元妻から突如、哲郎に連絡があった。妻が事故で入院、子ども・俊介の面倒をみて欲しい、と。
  哲郎はアキに相談なく、俊介を家に引き取った。ムッツリするアキ。だが、アキも段々と俊介の世話をするようになる。いいおねえさんになろうと懸命なアキ。哲郎には、3人が仲睦まじいファミリーにみえ始めた。
  しかし、彼女のこころには、なんで私が俊介の世話をしなきゃならないのよ、自分の仕事を犠牲にしたくない、という不満で心は揺れ動く。ついに爆発。


部屋  アキはひとりで住む部屋を探し始める。
  ある日、それを哲郎が知る。同時にそのころ、元妻は退院し俊介は実家に帰って行った。さて、アキと哲郎は・・・。

  元妻からみると、申し訳ないけれど俊介の面倒を少しの間、みてください、だった。 退院したのち、元妻は感謝の気持ちをアキに電話で直接伝えた。ただし、いきなりは話しづらいので、俊介からアキに電話をかけさせて、のことだった。(ページ上の写真:その電話を受けるアキ)
  加えて、元妻は病床から俊介に、毎日電話している。母子の絆が強い。
  俊介からみると、はじめは馴染めなかったが、哲郎もアキも優しかった。特にアキは、新しくできたおねえさん。その電話で俊介は、また、遊びに行くよ、だった。

  哲郎とアキは、気づく。根を下ろさない浮遊した関係、根を下ろすことを避けた関係は、自由ではあったが意外ともろいことにふたりは気付くのであった。

  観る前に準備が必要な映画です。
  こんな映画、付き合ってられない!! ってことにならないように、頭にあるあれやこれやを一旦消去して、観る前に心を澄ましてからじゃないと、つまんない映画になってしまいます。
  観る者が映画のシーンに入って行って、彼らのそばで彼らと一緒になって場を共有する映画です。


監督:諏訪敦彦|1999年|147分|
ストーリー:諏訪敦彦、三浦友和、渡辺真起子|
ダイアローグ:三浦友和、渡辺真起子、高橋隆大、梶原阿貴、石井育代、石井榛、石井椋、しみず霧子、北見敏之、稲木利勇、猪本康子、猪本太久麿、猪本健治、伏屋博雄、藤田雄己、豊島圭介、武田大和|
撮影:猪本雅三|
出演:織田哲郎:三浦友和|松野アキ:渡辺真起子|高橋俊介:高橋隆大|多田:梶原阿貴|中村成子:石井育代|レストラン・マネージャー:北見敏之|成子の子供:石井榛、石井椋|俊介の母:しみず霧子

こちらで、本作のような「静かな映画」(邦画編)を
厳選し、まとめています。
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いくつかのテーマに沿って、一夜一話に掲載の映画からピックアップしています。
第9弾のテーマは、「静かな映画  邦画編」
ガラスのように、壊れやすい映画ってある。
繊細で華奢で、語る声が小さい。
心ない誰かが、「辛気臭くて、つまんない。」と言った瞬間に、壊れてしまう。
心静かな時に観よう。

諏訪敦彦 監督の映画
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M/OTHER
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2/デュオ


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やまなか
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