映画「悪の階段」  監督:鈴木英夫

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  金庫破りの4人の男と、ひとりの女のミステリー話。
  観ているうちに、話の先への展開がだんだんと分かってしまうのだが、計5人の心理描写の時系列的変化の演出がうまいので、最後まで観てしまいます。山崎努と西村晃がいい味だします。

  若いボスの岩尾(山崎努)は、頭の切れる男。残りの3人、一番若い熊谷はまさしく金庫破りのプロ、下山(西村晃)は殺しのプロ、小西(加東大介)はプロの運転手、つまり本職は社長お抱え運転手で妻がいる。そうそう、岩尾、熊谷、下山は、みな独り身で日ごろは同じビル建設会社に勤め、工事現場で働いている。

  企業の給与支払いが、現金だったころの話だ。4000万円が銀行から、ある会社の金庫に収められた。この会社・亜東化学の社屋建設現場で、かつて働いていた岩尾は、すでに金庫の場所を知っていた。そして計画通り盗み出せた。4000万円は4人で1000万円の等分割と当初から約束していた。もうひとつの約束は6か月後に分ける。それまでは、何もなかったように振る舞う。ただし、金の確かな隠し場所を確保するため、岩尾は建設工事会社を辞め、店を出して不動産屋を始める。実は、その店には防空壕のような地下室があって、ここに頑丈な金庫を準備して4000万円を隠した。 店には常時、岩尾とその女ルミ子(団令子)が住み込み、残りのメンバーは時折りここに立ち寄る。そんな状況で日々が過ぎていく。

  そんなある日の新聞に、ほかの強盗事件の記事が出た。記事によると、メンバー数人の金の配分が不均等だ。主犯は多額で、自動車運転役はたったの2万円だ。こんな記事を見つけて読み上げるルミ子。それを黙して聞き入る岩尾、下山、若い熊谷。岩尾、下山はしきりにうなづく。しかしそこに運転手の小西はいなかった。
  数日たったその日、小西が店に現れた。小西に女が出来て、女に金を貢ぎたい、自分の取り分1000万円を減らしても良いから6か月待たずにまとまった金が欲しいと泣きが入るが、3人は納得しない。小西の姿が、地下室の土間の穴に消えた。結果、残ったメンバーの取り分が自ずと増えたことになった。
  次に起きたことは、ルミ子が若い熊谷を色気でかどわかし、1200万を持って駆け落ちしようとした。だが下山に見つかって熊谷は殺される。今度は下山がルミ子を譲れと岩尾に言い出した。岩尾は下山を圧死させる。6か月経たずに残ったのは、岩尾とルミ子のふたりだけ。岩尾はふたりで逃げる計画をルミ子に言う。そう言いながらルミ子毒殺を仕掛けるが、ちょうどその時に店に人が来て、肝心な時に岩尾はその場を離れた。その隙が、彼の運のつきだった。そして彼女は、もうひとつ、ある手を打つ。最後は、転がる死体と店にガソリンを撒き、4000万円詰まった重いスーツケースをふたつ、両手に店を出ていくのであった。あとには、ごうごうと燃える店が闇に浮かび上がっていた。
下2  ルミ子は、岩尾が強盗成功直後に言ったことを思い浮かべる。「俺の本当の仕事は、4000万円を手に入れてから始まるのだ。」 その時、彼女は言った。「4000万円をあなたがひとり占めしようということでしょ。」

  岩尾のそんな思いをルミ子はあうんで感じ、あたかも岩尾の操作する繰人形のように振る舞ってきた。そして全額を岩尾のものにした。これは愛だったのかもしれない。だが、ルミ子は愛を越えて金を手に入れた。それは岩尾のルミ子に対する裏切りを彼女が知ったからかもしれない。いや、彼女は初めから、確信犯として4000万円を奪い盗ろうと計画していたのだ。



監督・脚色:鈴木英夫|1965年|103分|
原作:南条範夫|撮影:完倉泰一|
出演:山崎努:岩尾|西村晃:下山|久保明:熊谷|加東大介:小西|団令子:ルミ子|久保奈穂子:小西の雇主である社長のめかけ・お京|清水元:小西の雇主社長|佐田豊:岩尾の店がある地域の派出所巡査|渥美國泰:今井刑事|庄司一郎:是枝刑事|土屋嘉男:第二課の刑事|中山豊:金物屋の店員|鈴木治夫:亜東化学宿直員A|関田裕:亜東化学宿直員B|池田生二:キャバレー宿直員|宮田芳子:中年の婦人客|

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