映画「幻の光」  監督:是枝裕和  出演:江角マキコ、浅野忠信、内藤剛志

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  夫の郁夫は、妻と生後3ヶ月の子を残して、突然死んだ。
  妻ゆみ子(江角マキコ)は、郁夫(浅野忠信)の生前の様子に、自殺の前兆など、まったく感じなかったのである。運転士の話では、郁夫は列車に向かって線路を歩いていたらしい。ゆみ子は、夫を確認したかったが警察から、原形を留めていないと言われる。死顔を見ることさえできなかった。
  ゆみ子が抱えてしまった、この突然の喪失感はあまりにも大きかった。それは、夫の死を悲しむ悲しみよりも重く、心の奥底に沈んで行った。

  アパートの大家の紹介で再婚が決まる。ゆみ子の母も喜んだ。再婚相手は、能登半島・輪島の小さな漁村に住む民雄(内藤剛志)という男。民雄も妻を亡くしていた。娘・友子がいる。引越しと先方の受入れが淡々とすすみ、ゆみ子は息子の勇一を連れ、ボストンバッグひとつで輪島行の列車に乗った。
  民雄の家は、すぐ前がもう海だった。祝言を挙げ、日は瞬く間に過ぎていく。ゆみ子と勇一、民雄と友子は、ひとつの家族になって行く。

下組0  しかし、あの喪失感が、ゆみ子の心の底から、ふたたび頭をもたげてきた。その発端は、弟の結婚式でゆみ子が尼崎に帰省した際、郁夫と生活したアパートに立ち寄ったことで始まる。能登に帰って来ても、ゆみ子はただぼんやりしているばかり。民雄は前夫が忘れられないのか、と聞く。
  その日、村人の誰かの葬儀があって、遺体を海辺で荼毘に付していた。葬儀が終わった夕暮れの中、荼毘の炎が消えゆくのを、ゆみ子は夢遊病者のように、ひとりじっと見続けるのであった。

  このあと、ゆみ子の背後から民雄が現れて、郁夫がなぜ列車に向かったのか、について語るシーンがある。それは、映画の題名である「幻の光」に魅入られたのでは?と言う。このシーンの扱いが、いかにも中途半端で軽い。残念だ。

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監督:是枝裕和|1995年|110分|
原作:宮本輝|脚色:荻田芳久|撮影:中堀正夫|
出演:ゆみ子:江角マキコ|民雄:内藤剛志|前夫・郁夫:浅野忠信|ゆみ子の息子・勇一:柏山剛毅|民雄の娘・友子:渡辺奈臣|道子:木内みどり|喜大:柄本明|とめの:桜むつ子|マスター:赤井英和|初子:市田ひろみ|刑事:寺田農|浩:大杉漣|

こちらで、本作のような「静かな映画」(邦画編)を
厳選し、まとめています。
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いくつかのテーマに沿って、一夜一話に掲載の映画からピックアップしています。
第9弾のテーマは、「静かな映画  邦画編」
ガラスのように、壊れやすい映画ってある。
繊細で華奢で、語る声が小さい。
心ない誰かが、「辛気臭くて、つまんない。」と言った瞬間に、壊れてしまう。
心静かな時に観よう。

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